鵺は怒りをたたえた瞳で詮充郎をじっと睨んでいる。
鵺の顕現と同時に星弥から苦しみが消え、もう一度ベッドに倒れ込んだのを見た皓矢は、式神の青い鳥を飛ばして星弥のベッドを包む結界を張った。
星弥の
鵺化が……!?
オリジナルが顕現したせいか?
ああ、これだ、この姿だ!
黒い毛、燃えるような紅い目、白く煌めく爪──私が、いや私達が焦がれていた鵺の姿がもう一度ここに!
皓矢が鵺を見据えて言葉を唱え始める。すると鵺の身体が石のように固まった。
動きを止めた鵺はその場で踏ん張るように立ち、小刻みに身体を震わせながら皓矢を睨む。
あまり話しかけないでくれ、
鵺に集中したい
僕はこの時のために一族が研磨してきた対鵺の術を仕込まれたんだ。こいつを生け取りにするためにね
そう。我らには鵺の遺骸しか手に入らなかった。サンプルとしては不十分
生きたままの情報こそが!
──新たな世界への扉を開けるのだよ
君達のやっていることはただの先延ばしだ。もう終わりにしよう
いや、呪いはここで終わらせる!……芯絶胆!
(何か、何かないか。鵺をライに戻す方法?いやせめて、鵺となったままでもいい、ライの自我を呼び覚ます方法を)
(──900年だぞ!?おれは何をしていた!どうして何も思いつかない!!)
永がそんな後悔に取り憑かれかけた時、星弥を守っていた青い鳥が甲高く鳴いた。
昏睡状態だった星弥が少し身じろぎした後、目を覚ました。