5-5 白き会談

文字数 1,242文字

 皓矢(こうや)の後についていくつもの部屋を通り過ぎながら長い廊下を歩いていると次第に寒くなってきた。
 兄さん、冷房が効きすぎてない?
 奥の部屋は本当は資料の保管庫なんだ。だから空調管理がしてあってね


 あ、寒ければ僕の上着を──

 い、いいよ!恥ずかしいから!
 さあ、着いた


 お祖父様、皓矢(こうや)です。皆を連れてきました

 入りなさい
 ──失礼します
 重たい鉄の扉を開けて皓矢(こうや)は四人を部屋に招き入れた。

 白い床、白い壁の広々とした空間が蕾生(らいお)達の目の前に飛び込んでくる。その中央には簡素な緑色の絨毯が敷かれ、低いテーブルとソファで構成された応接セットが置かれていた。

 ようこそ
 応接セットの更に奥、やや離れた場所に古めかしい木製の机、そこで椅子にゆったりと腰掛けている老人が存在感を放っていた。
 銀騎(しらき)詮充郎(せんじゅうろう)……
 何年ぶりかね?
 さあ、忘れました
 ──ふ。相変わらず非協力的な態度だ、ええと、今は周防(すおう)と名乗っているのか
 すいませんねえ、コロコロと名前が変わって


 そっちも相変わらずクソジジイですねえ、いや年老いてさらにクソが増しましたか?

 ふむ、相棒は今回も丈夫そうだな
 ライを値踏みすんじゃねえ、殺すぞ
 はっはっは!そう熱くなるな


 昔言ったろう?氷のように冷静であれ、と

 ああ、そうでしたかねえ。ま、とりあえずそちらの話を聞きましょう?
 では、そうしよう。皆もかけなさい
 その前にお祖父様にお願いがあります
 ふむ?
 お話が終わったら、今日は彼らを無事に家に帰してください


 わたしはお友達に嘘をついてお祖父様の所に連れてきました。だから彼らの安全は保証してください

 ──いいだろう。そもそも今日の会談はお前が設定したようなものだからな
 ありがとうございます
 では、前置きは省いて言う


 周防(すおう)(はるか)(ただ)蕾生(らいお)──特に(ただ)、君のデータが欲しい

 データ?
 そう。身長体重諸々の測定、血液サンプル、それからDNA採取、CTスキャンやMRIも撮影させてもらおう
 ジジイ、もうろくしたのか?おれが許すとでも思ったか?
 まあ、お前はそう言うだろう。ならば、せめて血液だけでも置いていきなさい
 嫌に決まってんだろ!
 それも嫌なのか?我儘を言うもんじゃない


 ──五体満足で帰りたければね

 お祖父様!?
 落ち着きなさい、星弥(せいや)。まだ交渉中だ


 (ただ)蕾生(らいお)よ、周防(すおう)はこう言っているが君はどうかね?

 あんたの高圧的な態度は気に入らないし、あんたの頼みを聞いてやる義理はねえ
 義理、か。鈴心(すずね)をこれまで保護してやったことはそれに当たらないか?
 保護?そんな話は鈴心から聞いてないな
 ……
 詮充郎(せんじゅうろう)、お前が前回どんな手を使ったかは知らないが、リンをおれから掠め取ったくせに白々しいんだよ!
 ──なるほど、そうとられているのか


 私は助けたつもりだったのだがね

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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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