6-15 偏愛

文字数 901文字

 可哀想な紘太郎(ひろたろう)よ。お前達の争いに巻き込まれて、志半ばで逝ってしまった


 よいか?ウラノス計画は紘太郎(ひろたろう)の研究なのだ!私はそれを何としても完成させなければならん!

 ふざけるなよ、黙って聞いてれば図々しい!そんなのは逆恨みじゃないか!


 おれ達の運命にお前らが横槍をいれなければ、お前の息子は死ななかった!

 黙れ!全ては(ぬえ)を手に入れる、開祖以来の目的のためだ!


 私達親子だけじゃない、先代も先々代も、そのまた先祖──銀騎(しらき)家の悲願なのだ!

 勝手に人の運命を横から掻っ攫おうとするからこんなことになるんだ!絶対に許さない!
 もちろんだとも。許しを請おうとは思わない


 だが、紘太郎(ひろたろう)には謝れ!お前達に翻弄された挙句に死んでいったのだから!

 爺さん、息子の命を弄んだのはあんたの方だろ
 ──何?
 あんたが味わった屈辱は確かに酷いと思う


 でも、生まれた子どもが力を持ってなかったら死ぬつもりだった?──息子の命をあんたは何だと思ってるんだ!

 私はそれで今の地位にいる。あの時の選択を後悔などしておらん!
 だからあんたはまた繰り返すんだ!孫の命をまた弄んだ!

銀騎(しらき)に言った言葉を俺は許さない!

 蕾生(らいお)くん……
 私は息子の命を弄んでなどいない。あの子は私を救ってくれたのだ。あの子がいたから今の私がある。感謝こそすれ、弄ぶなど──
 お祖父様……
 そ、そもそも、リンの魂を抜く術も、私が紘太郎(ひろたろう)に教わった術式と呪具で出来るはずだったのだ


 だが、あの子は私が止めるのも聞かずに瀕死の体をおして自ら実行した


 結局、紘太郎(ひろたろう)は私にはできないと思っていたのだ!


 無力な私を見下していたのだ!


 だから御堂(みどう)の裏切りに加担した!


 力のない私など邪魔だったのだ!


 詮充郎(せんじゅうろう)は愛していたはずの息子に対する憎しみをも白日の下に晒す。
 私は紘太郎(ひろたろう)がいなければ何も為せなかった


 ああ、屈辱だとも、我が子に教えを乞うて陰陽術のいろはを習うのは!


 幼子が習う術も私は出来なかったのだから!


 それは違います、お祖父様!
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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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