5-10 苦悩

文字数 1,973文字

 ──その後は暗転です。私達の意識はそこで途切れました
 次に気がついたら、数十年経っていて、しかも子どもだった──という訳
 それが、最初の転生?
 自分が転生したんだとわかったのは、その生が終わる直前だった


 その後も転生を繰り返して──何回か経験していくうちに少しずつシステムみたいなものが分かり始めて、今に至る

 何度も、何度も、九百年間……
 (いたずら)に過ごしてきたつもりはないんですが、未だわからないことばかりなんです
 そうだね。ライくんだけが(ぬえ)に変化するのは何故か


 君が一番返り血を浴びたからだっていうのは僕とリンがこれまでから考察した理由に過ぎないし


 一番最初に(ぬえ)雷郷(らいごう)を使って復活したのだとして、僕とリンを殺しただけでは飽き足らず何度も転生させてそれを繰り返す理由も、まだわからない

 ……
 とにかく僕らは生まれ変わる度に、君を(ぬえ)に変化させないことを第一目的としてやってきた


 (ぬえ)にならなければもしかして僕らはもう少し長く生きられるかもしれないと思ってね

 けれど、私達の事情は奇異なものですから、外部からの干渉も多くてこれまでに貴方の(ぬえ)化を防げたことがありません
 僕らの受けた呪いは、そっち方面ではだいぶ魅力的らしいんだよね


 銀騎(しらき)に目をつけられてからは、あいつらから逃げるだけでせいいっぱいの時も沢山あった。ほんと、銀騎(しらき)のせいで全然事態が前に進まないんだ

 ──鈴心(すずね)、もういい。大丈夫だ
 その手を話すと、鈴心(すずね)は心配そうに蕾生(らいお)を見上げた。
 本当に?
 何ともねえって、少しは信用しろよ
 ──

 我慢しなくていい。

 文句があれば言え。

 何でもいいから吐き出してしまえ。

 

 ──そんな圧を感じたので、蕾生(らいお)は率直な感想を述べる。

 正直言えば……たまらねえよ


 俺は何度も何度もお前らを殺してきたってことになる。それだけで死にたくなるほどキツい


 でも、俺が思い悩むだけでも(ぬえ)化するかもしれない──なら俺は悩んだり後ろ向きになることも許されない

 ライくん、それは違う
 そうです、ライ。私達を殺しているのはあくまで(ぬえ)であって、貴方ではありません
 でも、元は俺だろ?
 君が(ぬえ)になったことイコール君は(ぬえ)に殺されたってことだ


 何故なら(ぬえ)になった後、僕らはそれと意思の疎通ができたことはない。ただの破壊を繰り返す化け物なんだ


 だから、君の内に秘められている(ぬえ)は一番最初に君を殺している。そして僕らはその仇を取ってる──残念ながら良くて相打ちなんだけどね

 そう、考えてもいいのか?
 もちろん!ていうか、そうなんだよ
 ライが悩む必要なんてないんです
 わかった


 ──ありがとう、お前らがいてくれて良かった

 蕾生(らいお)の言葉に、(はるか)鈴心(すずね)も満足そうに頷いた。

 これでまた、明日を生きることができる。

 前を向いて、運命に立ち向かっていく。

 さあて、薄暗くなってきたから今日はオヒラキにする?
 銀騎(しらき)の爺さんの提案はどうするんだ?
 んなもん、無視に決まってるじゃん!


 ──まさかライくん、取り引きに応じようとか思ってないよね?

 呪いを解く方法があるって言うなら、俺は別にいい
 そんなのハッタリだよ!ジジイの所に行ったら絶対帰って来れないから!
 鈴心(すずね)もそう思うか?
 可能性はゼロではないと思います。でも改めて考えるとやはり信じられません。


 詮充郎(せんじゅうろう)はそんなに単純な人物ではない

 だからね、今日はさっきリンが言ってた通り、萱獅子刀(かんじしとう)の在処がわかっただけ良しとする
 じゃあ、あれを取り返す方法を考えるんだな?
 うん。一晩考えてみるよ。だから今日は解散
 あの、ハル様……。星弥(せいや)の処遇は……
 うん?いや僕が処断できる訳ないでしょ。今日はしてやられたけど


 まあ、今後の彼女の出方次第かな

 ──引き続き協力してくれるように頼みます
 いや、お前が頭を下げる必要はない。彼女の自由にさせてやれば?
 わかりました。では、私は戻ります
 うん。また明日ねー
 (はるか)がそう言うとすぐに振り返って駆け出し、あっという間に姿が見えなくなった。そんな鈴心(すずね)の背中を見送って(はるか)がぽつりと呟く。
 不安だなあ
 何がだ?
 リンの気持ちが、だよ


 今回は銀騎(しらき)の身内に生まれてしまったせいか、銀騎(しらき)に心を寄せすぎている気がする。特に銀騎(しらき)星弥(せいや)にね

 それは、仕方ないだろ?
 うん……これが悪い方に影響しないといいけど


 ここまで銀騎(しらき)詮充郎(せんじゅうろう)が計算していたとしたら、本当に厄介なクソジジイだよ

 そうだな……
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色