1-3 銀騎研究所
文字数 889文字
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部屋の隅で蹲っている。
あれは、俺だ。
初めて人を傷つけた。理不尽な力で傷つけた。
納得がいかない。俺のせいじゃない。そんなつもりはなかった。
怒りと困惑と情けなさ。そんな感情がぐるぐると頭の中で回り続ける。
嫌だ。なんで俺は違うんだ。どうして俺が悪いんだ。
「ねえ」
その声は無遠慮に俺の中に入って来た。
「君は悪くないよ」
本当に?
「これからは僕が考える」
暗い空が晴れた気がした。
「君の力は僕が使うから、僕が考えて君が動けばいい」
──いいのか?
「だから、出ておいでよ。僕には君が──」
必要なんだ、と笑う姿に。
心の底から安心した。
高校へ向かう道を通り、公立公園を過ぎると、真新しい無機質な道路が顔を出した。
急に現れた白塗りの大きな鉄の門。
連休で浮かれる世間とは別世界のような静けさだった。
二人の間に沈黙が流れる。
敷地に一歩踏み入れて驚いた。
碁盤の目の様に整備された道路、理路整然と建てられた研究棟の数々。
無機質な道路と真っ白なビルが立ち並ぶ、まるで模型のような景色が広がった。
敷地内の地図と現在地を見比べている。