5-3 青い風

文字数 1,128文字

 ヒュー!
 す、すご……こんなにもだったなんて──
 なんだ、こいつ
 どれどれ
 ハル様!危険です!
 あー、だいじょぶだいじょぶ、完全に沈黙してる
 ライオンか……?
 頭はそれっぽいけど……体に斑点があるね、ヒョウかな?


 するとこいつはレオポン?

 なんだよ、それ
 昔、ライオンとヒョウを掛け合わせた動物が見せ物にされてたんだよ。今ではもちろん禁止されてる
 動物実験までやってるってことか……
 動物、ではないね。石から出てきたし。こいつの尻尾見てよ
 ──蛇?
 その生物の尻尾があるはずの場所には違うものが生えている。尻から出ているそれは鱗状の細長い胴で、尻尾の房であるはずの部分は蛇の頭だった。
 これじゃあ、まるで(ぬえ)の出来損ないだ
 頭は猿、胴体は猪、尾は蛇、手足は虎──という(ぬえ)の姿に、この生物は酷似している。
 これが……?
 まさか、銀騎(しらき)研究所は(ぬえ)を造ってる……?
 鈴心(すずね)はそれを聞いて一歩足を前に進めて、その姿をよく見ようと目を凝らしていた。


 星弥(せいや)は一人取り残され呆然としている。その背後から黒い影が蠢いた。

 銀騎(しらき)!!
 え?
 蕾生(らいお)が気づいて、星弥(せいや)が振り返るとその目の前にまた別の生物──今度は黒い犬のようなものが牙を剥いていた。
 星弥(せいや)ァ!!
 ──ルリカ
 そこに一陣の青い風が吹き抜けた。


 涼しげな声とともに、青く大きな鳥が黒い犬を、その牙が星弥(せいや)を捕える前に押さえつけた。

 力で圧倒する青い鳥は黒い犬の眉間に嘴を刺す。すると黒い犬の体は霧のように散り跡形もなく消えた。

 あ……
 星弥(せいや)
 に、兄さん……
 お兄様……
 怪我はないかい?星弥(せいや)
 あ、うん、大丈夫……
 今のは──?
 こんにちは、周防(すおう)(はるか)くんと(ただ)蕾生(らいお)くんだね?


 星弥(せいや)鈴心(すずね)がお世話になってます、兄の皓矢(こうや)です

 ああ……
 こうも簡単にレオポンが倒されるとは、ね。


 おかげで第二のセキュリティが発動してしまったようだ。すまなかったね

 ──俺達を試したのか?
 凄いね、予想以上の力だ
 こ、の──ッ!
 ──そうか、僕らはまんまと一杯食わされたんだね、銀騎(しらき)さん?
 え──?
 星弥(せいや)
 ごめんなさい、さすがにバレバレだったかな
 いや、そんなことはない


 君は中立の立場だってわかっていたつもりだったんだけど、油断してたな

 星弥(せいや)はお兄様が来ることを知ってたんですか?
 うん、ごめんね、すずちゃん。私が兄さんに頼んだの。彼らと話し合って欲しいって
 兄貴が今日留守ってのは嘘だったのか?
 ──うん、ごめんなさい
 ……
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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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