第39話 悪魔的撤退
文字数 1,565文字
夜が明けるころ、瓦礫を掻きわけて人影が這いでた。
意識のない2人を乱暴に地面に下ろし、ロイズもへたり込む。
もう何度目かの悪態を吐いたとき、明け方の空に浮かぶ人型のシルエットを見た。
あれは――
悪魔の羽をたたみ、シェリーはロイズのそばに着地する。埃まみれのロイズをひととおり眺めて、静かに笑う。
魔王様から命令が下ることを見越して、オレの妨害に打ってつけの駒をあらかじめ育てていた……ってほうが自然か。
それどころか、組合の交渉すらシェリー課長の差し金じゃないかと思ってますよ。
賃金不払い、労働者への迫害――そのさじ加減で組合の行動すら操っていた。労働者いじめは魔王様も喜ぶでしょうしね。
……で、オレたちはまんまとシェリー課長の手のひらで踊らされていたってことじゃないんですか?
羽を広げ、明け方の空へとシェリーは舞う。
どこまでも悪魔的な上司は、そう言い残して去っていった。