第14話 悪魔的いかずち

文字数 1,197文字


少女レニを振り払えないまま街道を進むと――またしても使い魔が現れた!

長距離通勤ナンノソノー!
25時間働キタイナ!

群れだ!
ロイズたちを包囲し、じりじりとその輪を狭めてくる。

よし、レニとか言ったな? おまえも戦え。
…………。
……すぴー。
こいつっ……!

なんのためにおまえを連れて来たと思ってるんだ、降りろ!
……やれやれ。
ロイズパパは娘づかいが荒い。

ため息ひとつ、レニは緩慢な動きでようやくロイズから離れた。

ガザリアはすでに使い魔との戦闘に入っている――いま、2匹目を切り伏せた。

はあああっ――!
仕事ノ……終ワリ。世界ノオワリ……。

使い魔は両断され、灰となって風に流れる。

いいかレニ、とにかくオレを守るんだ。
(こくり。)
魔法使イ……近ヅク、弱イ!

前衛のガザリアが離れた隙に、他の使い魔がロイズたちに群がる。

ガザリアを除けば近接戦闘が出来るのはララミだけだ。
しかしそのララミも、使い魔が相手ではリーチと攻撃力の点で大きく劣る。うさぎ天使の手足は短いのである。

お、お兄ちゃん!

それでもなんとか1匹の使い魔を食い止めているが、この数ではロイズを守りきれない。

おいっ――

ロイズは焦れてレニを見やる。

――と、少女は小刻みに震えていた。

~~~~
ビビってるのか?
――いや?

レニはあくまで無表情だ。
ただ首から下を震わせ、立ち尽くしている。
キィ!

使い魔が飛びかかってくる!

ちいっ……!

やむなくロイズが対処しようとした瞬間、レニがつぶやいた。

レニ式 雷魔法……
せいっ。

少女の両手から雷光がほとばしる!
ビッ、ビビビビビ――!?

電撃が周囲の使い魔たちを直撃した。
2匹を仕留め、残りの3匹が動けなくなる。

前方の敵を片づけたガザリアが、取って返す刃でその3匹も斬りたおした。

ガザリアは息を弾ませ、

やるじゃない、レニ!
(こくりんちょ。)
今のは……【メガサンダー】か?

――ふん、まあまあの拾い物だな。


どうにか使い魔の群れを撃退し、ロイズは安堵のため息を漏らす。

パパ、言われたとおりにしたのでお金ください。
ふざけんな。

……金銭が発生すると、『パパ』の意味が変わってくるぞ。
………。
パパとわたしは肉体と金銭の関係。

言いながらレニは、いそいそとロイズの体によじ登る。

だから……!
邪魔くさいし――おまえ、ほんのり熱いんだよ!
ふぅ。ベスポジベスポジ。
くそっ!
悪魔スマホがしにくい!
そういう問題なのお兄ちゃん……?

兄に密着する少女に嫉妬を覚えるララミではあったが、一方で、ダメな兄妹が増えてどこか微笑ましいような、そんな微妙な気分もしている。

そう――兄はクズだがロリコンではないのだ。

ララミの真の敵は金髪の姫騎士なのである。

(ま、またゾクっと来た??)
(……でも)

ララミは先ほどの戦闘を思い出す。

なんだろう――レニには、言いしれない違和感が漂っていたような。

(『レニ式 雷魔法』……?)

少女のつぶやいた言葉を思い返し、ララミは首をひねるのだった。

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登場人物紹介

ロイズ

不労所得をこよなく愛する悪魔。今は仕方なく勤め人に身をやつしている。
属性:怠惰

ララミ

ロイズの妹。非悪魔的思考をつかさどる悪魔。兄とは正反対で品行方正。
属性:色欲

ララミ(人間界バージョン)

非悪魔的なルックスで兄を困らせる。
そうび:出刃包丁

ガザリア

ロイズとともに選ばれた勇者の1人で、旧王家の末裔。驚異の胸囲を持つ17歳。
属性:傲慢

レニ

すえは大魔法使いとウワサされる少女。誰がウワサしているのかは知らない。実は人肌が恋しくて仕方がない。
属性:暴食

シェリー

ロイズの上司。悪魔的勤勉さでもって、若くして管理職にのし上がった有能な悪魔。
属性:強欲

魔王

部下を地獄の業火で焼き尽くすのが趣味。でも夜はM。
属性:??

ゴラザイアス

魔王の秘書。低級モンスターだが、その爪は一撃で人間の頭部を砕くことができる。しかし背が低いので頭部に届いたことはない。

使い魔(ヘビ)

残業が好き。

シノゥ

エルフ族の勇者。もと踊り子らしいが……?

属性:??

エンディ・ローンズ

もとトレジャーハンター。たぶん蛇とか苦手。

奥太郎

健全なオーク。同族からは知能派美男子と呼ばれる人気者。じつは簿記2級のスゴ腕。

カイト

温泉街のアルバイター。人を探している。

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