第17話 悪魔的交信
文字数 1,694文字
森の手前で反転したレニは、悪魔ミストアと対峙する。
レニの指先から、無数の光る矢がミストアに殺到する!
ミストアの周囲に魔法障壁が展開され、レニの魔法はもろくも砕かれ――
――いや!
氷の矢は、まるで何もなかったかのように魔法障壁をすり抜けミストアを襲う!
たしかにダメージは与えられたが、ミストアを本気にしてしまっただけで、事態は好転していない。
ミストアの魔力が高まる!
――と。
そのとき。
謎の低い振動音がして、ロイズは自分のポケットを確かめる。
いや――違う。
魔法の発動を中断して、ミストアが、
悪魔スマホを取り出した。
ははっ!
ただいま無職のロイズ先輩には縁遠い業務ですけれどね!
今日、上司が『よーし、仕事終わりに係のメンバーで軽く1杯飲みに行くか』なんて言うもんですからね。
新入悪魔の僕が予約を取っているんですよ!
悪魔飲みニケーションってやつです!
あはははは!
ミストアは通話に戻る。
『……ええ。
ちゃんと奥の、半個室にしてくれました?
掘りごたつですよね?
うちの上司、アレじゃないと足収まらないんで。3本あるんで。
上座のところ、テーブルの切れ目になってないですよね?
あれ邪魔なんですよ、足下が。
真ん中にテーブルの脚があると――ええ、そうでしょう?』
『……ああ!
心配になって来ました!
図面送ってください。部屋の図面。それ見て席順決めますんで。
……ない?
じゃあ描いてくれればいいじゃないですか! 気の利かない店だなぁ。
まだ営業時間前? おたくの従業員、サービス残業大好きなんでしょう? それくらい便宜図ってくれたって――』
長い。
あまりの長さにレニは飽き、もうろうとしていたガザリアも、ようやく正気を取り戻し、自分の足で立ち上がるまで回復した。
電話を続ける悪魔を背に、ロイズたちはコソコソと森の中へと逃げていった。