第20話 悪魔的正装

文字数 1,112文字

夜――カジノの光が星明かりをかすませる夜――。

わっとっと……!

ガザリアが転びそうになるところに、ロイズが手を貸した。

なにやってんだ、しっかり歩けよ。
う、うん……

慣れないナイトドレスとヒールの靴に、ガザリアは落ち着かない。胸元は大きく開いていて、街ゆく人の視線が刺さるのを彼女は感じていた。

うう……。
ほら行くぞ、ロケットおっぱい。
お、おぱ!?

――蹴るわよ!? ねぇ、ヒールで思いっきり蹴るわよ!
ロケット勇者おっぱい。
せ、せめて『ロケットおっぱい勇者』にしなさいよ!
いいのかよ、それで。
よ、よくないわよ! もーっ!

ぎゃあぎゃあ騒ぐその後ろに、レニが続く。
うごきにくい……。
やはり着慣れないらしいロングスカートで、ぶーぶーと文句を垂れている。ピアノの発表会にでも立つかのような格好である。

ロイズはロイズで、いつもとは違うおしゃれシャツ。

ララミは……

…………。

ララミは、耳にリボンを付けただけだが――

ともかく、これからカジノに赴く一行は、夜の正装に着替え、アーヴの街を歩いているのだった。


……ちっ。今夜はスイートルームでダラダラ過ごすはずだったのにな。
すみません――

ホテルまでロイズたちを迎えに来ていた兵士が恐縮する。彼もともにカジノに『客』として乗り込む手はずになっているため、さすがに鎧は脱いでいた。
住民たちに聞くと、カジノのオーナーは……その、つまり今回の首謀者は夜にしか姿を現さないとかで。
――昼職があるとか何とか。
ひるしょく……。
水商売感がすごいな。どんな悪魔だよ。
悪魔って決まったわけじゃないけど――、あっ!

またしてもつまづくガザリア。

だから手間焼かすなって。
ご、ごめんなさい……

ロイズの腕にすがりついた拍子に、ガザリアの胸が、

(ふにょん。)

と、ロイズの二の腕に当たる。

うーん88点。
ばっ……!
なに点数つけてんのよ!

しかもリアクションに困る点数!!
またいちゃいちゃしてる。
…………。
…………。
ほ、本気で気をつけろよガザリア。

もしかしたらおまえ、カジノに着く前に突き殺されるかもしれないからな……。
??

前方にカジノが見えてくる。謎の光に包まれて、昼に見たよりずっと豪華な雰囲気だ。

(――しかし)
(これもミストアの仕業か?……いや、ここで罠を張るくらいなら、わざわざ街道でオレたちを襲う意味が――)
あ! 恐らくあれがオーナーです!
……すごいお出迎えね。まるで私たちを待ってたような――
スタッフが勢揃い――か?
あの真ん中がオーナー?

……げ。

ミストアではなかったが、やはりロイズには見覚えのある顔だった。

………♥

ロイズ一行を出迎えて彼女はにっこりと……そして、ねっとりと笑った。

お待ちしてましたわ、ロ・イ・ズ・せんぱぁい(笑)♥

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登場人物紹介

ロイズ

不労所得をこよなく愛する悪魔。今は仕方なく勤め人に身をやつしている。
属性:怠惰

ララミ

ロイズの妹。非悪魔的思考をつかさどる悪魔。兄とは正反対で品行方正。
属性:色欲

ララミ(人間界バージョン)

非悪魔的なルックスで兄を困らせる。
そうび:出刃包丁

ガザリア

ロイズとともに選ばれた勇者の1人で、旧王家の末裔。驚異の胸囲を持つ17歳。
属性:傲慢

レニ

すえは大魔法使いとウワサされる少女。誰がウワサしているのかは知らない。実は人肌が恋しくて仕方がない。
属性:暴食

シェリー

ロイズの上司。悪魔的勤勉さでもって、若くして管理職にのし上がった有能な悪魔。
属性:強欲

魔王

部下を地獄の業火で焼き尽くすのが趣味。でも夜はM。
属性:??

ゴラザイアス

魔王の秘書。低級モンスターだが、その爪は一撃で人間の頭部を砕くことができる。しかし背が低いので頭部に届いたことはない。

使い魔(ヘビ)

残業が好き。

シノゥ

エルフ族の勇者。もと踊り子らしいが……?

属性:??

エンディ・ローンズ

もとトレジャーハンター。たぶん蛇とか苦手。

奥太郎

健全なオーク。同族からは知能派美男子と呼ばれる人気者。じつは簿記2級のスゴ腕。

カイト

温泉街のアルバイター。人を探している。

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