第16話 悪魔的選択
文字数 1,126文字
黒い翼で宙に浮き、左手でガザリアの細い首を締めつける。
魔法は使えない。
射線上に差し出されたガザリアまで巻きこんでしまう。
両手に包丁を構え、よく分からないままララミは空中でうろたえる。
そこを――ララミの体を、
がしっ!
とロイズがつかみ、ぶん投げる!
空中の悪魔へ向けて、包丁二刀流のうさぎ天使が、まっすぐに飛んでいく。
まっすぐ、
まっすぐ――
その直線上には、兄の婚約者であるガザリアが。
本人の意思とは無関係に、どす黒いオーラがララミを覆う!
意表を突かれたミストアがわずかに隙を見せる――
いま!
ミストアの死角――ガザリアの体と重なり視界から外れるその位置から、ロイズは電撃の魔法を放つ。
ダメージと呼べるほどではない。
だが、ミストアの左腕に直撃した雷と、そのすぐそばを掠めたうさぎ天使の刃は、彼の腕からガザリアを解放させた。
落下するガザリアを受け止め、ロイズは森のほうへと駆け出す。
追ってくるミストアに、ロイズは首だけで振りかえり、立て続けに魔法を放つ。
だがその魔法は、悪魔の作りだす魔法障壁にかき消される。
今のロイズは、人間の肉体と、人間の平均よりやや高い魔力を持つだけのニセモノの勇者なのだ。
使い魔相手ならともかく、本物の悪魔であるミストアには通じない――
レニは――
魔法使いの彼女はふいに足をとめ、振り向く。
少女のちいさな背中。