第35話 悪魔的オーダー
文字数 1,605文字
ミストアが言っていたことだ。
元はこいつと――
ガザリアさんとレニちゃんを―――あ。
ミストアの体から数千の魂が抜けていく。それぞれ壁や床をすり抜けて外へ、そしてそのうちの２つがガザリアたちに収まる。
――あれ、私、どうして
ガザリアさんっ、レニちゃん！
不幸中の幸いか、悪魔カジノの崩壊はゆるやかなようである。だが最上階であるこの10Ｆでは、天井が崩落を始めている。
ご不満か？ 勇者様。
……下の階、人がたくさんいるのでは？
街の人たちが……もう目は覚めたかもしれないけど、避難させなきゃ！
はぁ？
オレがそんな面倒なことを進んでやると思うか？
そんなこと口にした瞬間、そこの勇者様に背中からバッサリやられそうだからな。
やるなら真っ正面から一刀両断よ！ ズバッと！
……ったく、うちのパーティーは馬鹿ばっかだな。
時間が惜しいわ！
効率よくいくぞ、無駄な仕事はしたくないからな。
それでもさすがに、低層階の連中は異変を感じとって逃げ始めている可能性が高い。使い魔どもは無視するとして――
惚(ほう)けている人間は、ガザリア、おまえがケツを叩いて誘導しろ。
我先に走って、収集つかなくなっている奴らもいるだろう。そいつらのことは宥(なだ)めながら……できるな、女王様？
階段を駆けおりながら、ロイズは檄を飛ばす。
任せなさい！
先ほどロイズたちが打倒した９Ｆの屈強な使い魔たち。半数以上はレニによって屠られたものの、残りはロイズの魔法で一時的にやる気を失っていただけだ。
それが今やっと、気力を取りもどして立ち上がろうとしている。
その数、１１匹――
頑固で保守的で、それで凶暴な――ミストアさんと主従契約を結んでるなら、手なずけるなんて無理だよ！
ただそのぶん、人間が余計に死ぬだけだ。
……って、なんだよガザリア。
ごめんなさい、こんなときに不謹慎で。
くそっ……ほら、さっさと行くぞ！
ええ、そうね！
一行による、カジノ脱出が始まった。
