第5話 悪魔的ねつ造
文字数 1,677文字
玉座で立ち上がり、国王は仰々しく両手を広げる。
なにやら口上を述べているが、ロイズはそちらには耳を貸さず、居並ぶ勇者候補たちを横目でうかがっていた。
『私たち魔王軍は手加減をしない。八百長があからさま過ぎると気づかれる恐れもあるし――人間たちにとっても、「激戦をくぐり抜けた勇者」のほうがありがたみがあるってものでしょう?
それに何より、魔王様がお喜びにならないわ。ロイズ君が苦しむところもたっぷりと見せてあげないとね。……ええ、この件に関しては諦めなさい。
むしろ、他の魔王軍の連中には「ロイズは裏切りました」って伝えることになってるのよ。……うふふ、頑張ってね』
(ふん、オレの欠勤は悪魔的所業だからな、むしろ良い方向で記憶されてるはずだ。
……なんだよ、その疑いの目は。
ま、そのへんのフォローはシェリー課長に期待するしかないか。魔力はともかく、今のこの体は人間と大して強度が変わらないからな。とどめを刺しに来られたら非常にヤバイ)
国王による、勇者洗礼の儀式はつつがなく進む。
勇者たちの胸には、それぞれに与えられた紋章が付けられていく。