第18話 悪魔的手法
文字数 2,568文字
あたりに注意を払いながら、ロイズたちは森を進んだ。
レニからの微妙な視線。
意識が飛びかけていたガザリアはともかく、レニのほうは、先ほどのミストアとのやり取りをしっかりと聞いている。
もしかしたらロイズの正体に疑念を抱いているのかもしれなかった。
あいかわらずの無表情だが、どこか満足げだ。
・
・
・
森を抜ける。
時間はかかってしまったが、ちょうど元の街道の先に迂回して戻ってきた形だ。
ミストアの気配はない。
そこでロイズは、先の戦闘から気になっていたことを思い出す。
ロイズはレニに向き直った。彼女はいま、3つめのアメ玉を舌の上で転がしている。
若干しゃべりにくそうにしながら、レニはプイっと顔をそむける。
ぽつり、ぽつりとレニは語り出した。
レニが期待する目で見あげてくる。
レニは両手の指を、わきわきと動かしてみせる。
ロイズはこめかみを押さえながら、
ガムをもっちゃもっちゃ噛みながら、レニが反論する。
レニの、無駄に強い腕力やら、どれだけ走っても息切れしない体力を思いながらロイズは嘆息する。
ロイズがやれやれと首を振ったそのとき、
暴れ牛だ!
アーヴの街から王都に向かう途中だったのだろう――荷車を引いていたらしい牛が、御者を振り払い、こちらへ猛然と走ってくる!
暴れ牛はレニの背後まで迫っていた。
驚き振り向いた少女の、そのすぐそばまで。
勇者パーティーががん首そろえて気づかなかったのも仕方がない、だって暴れ牛だもの!
ああ哀れ、幼い少女は猛牛に轢かれて無惨な姿に――
その刹那、レニはしゃがみ込むと、地面に突いた右手を軸にぐるりと回転し、猛牛に烈風のような足払いをくらわせた!
牛の巨体が宙に浮く。
今度は、レニの掌底が牛の横っ腹にクリーンヒット。
さらに――
肩からの体当たり。
牛は成人男性の何倍もある体躯をしているが――その小さな少女の体当たりは、猛牛の巨体を吹っ飛ばす。どんっ、どんっと何度か地面でバウンドして、ようやく転がる牛は動きを止めた。
小柄な少女による、目の覚めるような連続攻撃であった。
◆ 武闘家
◆ 大魔法使いが仲間に加わった!
(お菓子目当てで)
第3章 了