第56話 悪魔的魅了
文字数 1,313文字
悪魔ジグがガザリアから分離して、彼女を抱き留めたシノゥに襲いかかる!
霊体のジグがシノゥの体内に侵入し、彼女の体はがくがくと震える。そしてまたシノゥも、ジグの声で笑った。
ジグの哄笑とともに魅了の魔力がバラまかれる。
エンディが鞭を構え直し、ガザリアは聖剣WBLを拾い、ロイズを包囲する。もとからジグの目当てはシノゥだったのだ。
悪魔が取り憑いた肉体では聖剣に触れられない――だが、シノゥの魅了で操る人間ならば問題はない。
エンディの鞭とガザリアの鞭。
ふたつの打撃がロイズの全身を痛めつける。
悪魔化はできない。
地下空間で変身すれば天井が崩れ落ちる。ロイズ自身はともかく、人間たちは無事では済まない。それに何より、聖剣WLBでの打撃が魔力の集中を阻害する。まともに反撃すらできない――
ロイズを打つガザリアの手は止まらない。シノゥの――ジグの思惑どおりに鞭が振り上げられ、鋭く振り下ろされる。
だがかすかに、その表情には苦悶が浮かんでいた。ガザリアの薄い唇から血がにじむ。ほんの少しの抵抗――唇を噛み、それでもガザリアは鞭をふるう。ふるうしかできない。
……ロイズは、
悪魔の魔力が、弱まってるんだよぉロイズ!
ジグをめがけて放たれた火炎魔法は――しかし杖の一振りでかき消される。
ロイズはやれやれと息を吐き、片方の眉を吊り上げてジグを見上げる。
どてっ