第33話 悪魔的苦悶
文字数 1,743文字
魂を抜かれ、支えを失ったガザリアの体を横たえてから、ロイズはミストアを睨みつける。
ふわふわと抜けていく白い光。
その球体へとレニは、おぼつかない右手を伸ばし、
と、つまんだ。
なかば呆れるミストアの手に、レニの魂が収められる。
人間をつかまえての家族ごっこ、意外とハマりそうだったんじゃないですか?
人間を滅ぼすつもりで、裏切るつもりで。
けれどどこかで、家族の愛情を渇望していたロイズ先輩……あなたは、その人間どもにほだされていたのでは?
大笑するミストアの口へ、ガザリアとレニの魂が吸い込まれていく。
言い終わるより前、ロイズの体は爆ぜるように突進し、ミストアの腹へと右拳を叩き込んだ。
哄笑とともに展開されたミストアの魔法陣が、ロイズを軽々と吹き飛ばす。
壁に叩きつけられ、すぐさま左手をかざすと、ミストアの右腕をかすめる位置に照準を合わせ、
放たれた大炎を、ミストアは右手を鋭く払ってかき消す。
でも危ないじゃないですか、ララミちゃんまで巻き込むところでしたよ。
そしてこの程度、僕には通じない。これが悪魔と人間の差。そのうえ――今の僕は、腹にこの街からかき集めた人間の魂を蓄えている!
どう足掻いたって、無駄なんですよロイズ先輩。
うつろだったララミの瞳に、わずかばかりの光が戻る。
映し出されたのは、今まさに魂を抜かれようとする兄の姿――
ロイズはこちらを見て、片方の眉を吊り上げてみせる。平気だと強がっているのだろうか。
ねっとりとした視線で、ミストアはララミを睨(ね)めつける。
ララミに向けて伸ばした人差し指を、くいっと曲げると、
内臓をつかまれるかのような苦しみがララミを襲う。