第10話 悪魔的復讐
文字数 2,582文字
ロイズの突然の告白に2人が取り乱していた、そのとき――。
王都の目抜き通りに、鋭い悲鳴がとどろいた。
ガザリアは反射的に振り返り、悲鳴のしたほうへと走りだす。
うさぎ天使に耳たぶを引っ張られ、ロイズは不承不承ガザリアのあとを追う。
するとそこでは――
蛇(?)のモンスターが町人を襲っていた。
ガザリアの表情が固まる。
レンタルショップの店主だ――先ほどのあの店主が、モンスターに襲われている。店から転がり出て、蛇の牙から逃げ惑っていた。
突然のことに足を止めた通行人や、他の店の人間は、何も出来ずに震えている。
肩に乗せられたロイズの手をガザリアは、ぱっと振り払う。
剣を引き抜き、猛然と突進する。
流星のような斬撃が打ちおろされ、斜めに斬り飛ばされた蛇の首が宙を舞う。
蛇のモンスターは再生する。真っ二つになった体のそれぞれから、欠損した部分を補うように、にょきにょきと肉体が生えてくるのだ。
いくら斬っても同じことだった。
蛇は増え続け、ガザリアは消耗する。
剣だけで相手をするにはあまりにも相性が悪い。
そして蛇のモンスターは、なぜか執拗に店主を追いまわすのだ。
蛇のモンスターがうねうねと蠢き、しゃべる。
ロイズの頬がひきつる。
遠巻きに見る往来の人びとも、不審なつぶやきに耳を傾け出している。今日は『勇者』初日である――いきなり正体がバレては、元も子もない。
ロイズは拳を振るわせながら、仕方なく覚悟を決めた。なんと言っても魔法を使うと腹が減る。
ロイズの火炎魔法が発動した。無造作にかざした手のひらから燃えさかる火の玉が轟然と発射され、蛇の群れへと突っ込み、大炎をあげる。
使い魔たちは、断末魔の悲鳴とともに灰となった。
半分焦げたガザリアが、肩を怒らせ近づいてくる。
ロイズの放った【フレア】は蛇の使い魔たちを一掃したが、ついでに、その背後にあったレンタルショップもごうごうと燃えていた。
奇跡的に延焼はなく、レンタルショップだけが燃えさかり、崩れ落ちる。ガザリアの行動が早かったおかげで、他に目立った犠牲はないようだ。