第44話 悪魔的ゆうべ
文字数 1,277文字
起きて！
お兄ちゃん、昼だよ、起きて！
うーん……駄目だ、オレは太陽の光に弱いんだ……。
もう、またそんな吸血鬼みたいなこと言って！
私たちは悪魔！
あんな下位存在とは違うんだから！
ったく。
こっちは疲れてるんだ、もっと眠らせろよな……。
そんなことよりお兄ちゃん……！
朝起きたらガザリアさんが居なくって、書き置きが……。
ああん？
……『さようなら、またどこかで会いましょう』？
ママ、出てった。
…………。
お兄ちゃんがゆうべ、あんなことするから――
あんなことってなぁ……あいつが勝手に酔いつぶれたんだろ。
レニもテーブルで寝落ちしそうになるし。
そんで仕方なくオレがあいつを担いで２階まで……
ついでにお尻も触ってたよね！
人聞きの悪い。
触ってたんじゃない、揉んでたんだ。
余計悪い！
で、ベッドに着いたらガザリアのやつ、急に目を覚ましやがって。
しがみついて押し倒してくるから、大変だったんじゃねぇか。
しかもララミ、お前はお前で急に包丁もって飛びかかってくるし――
だって！
お兄ちゃん、どさくさ紛れにガザリアさんのおっぱいを――！
そりゃあ揉むだろう。目の前にあったら揉むだろう。
男らしい……。
ずっしりとした重量感、そしてまったりとした弾力。その感触は今もこの両手に――
感想いらないから！
……あのなぁ、そのくらいの役得はあってもいいだろ。
ガザリアは首にしがみついてくるし、お前は目の色変えて斬りかかってくるし、レニはレニで目を覚まして――
『パパ、ママ、プロレスごっこ？ まざる』
とか言ってフライングニーキックだぞ？
お前ら相手にするの大変だったんだからな。
う……！
怠惰の渦（ﾚｲｼﾞｰ･ﾎﾞﾙﾃｸｽ）でお前らを鎮めて……んで、オレも力尽きて爆睡。
どうだ？
これは全部オレのせいなのか？
そ、そう言われると――
でも、ガザリアさんが出てったのは事実だし。ゆうべはあんなにヤル気まんまんだったのに。
お兄ちゃん、他にも何かしたんじゃないの？
いや別に――
ああ、でも夜中に一度起きたな。
ガザリアと何か話したような気が……
それだよお兄ちゃん！ どんなセクハラしたの!?
決めつけるなよ。
いや別に普通の会話だったと思うが……そうだ、むしろ下手に出てやったくらいだったんだぞ。
『お前のパワーアップを手伝ってやる、遺跡に行くのも付き合ってやる』って。
そうなんだ……。
でも、じゃあどうして……。
つーかララミ、お前はガザリアがいなくなって良かったんじゃないのか？
仲悪かったし。
そ、それはまあ、ライバルが減るのは――
でも！
ちゃんとお別れの挨拶もできないっていうのはイヤだよ！
もう半分、家族みたいになってたし……そういうのは、もう……。
…………はぁ。
なんでウチのパーティーはこうも世話の焼けるやつばっかりなんだ。
準備しろ、行くぞ。
え、行くってどこに？
あいつ、聖剣を欲しがってたんだろ？
ワーバ遺跡だっけか。そこに向かえば消息がたどれるかもしれないしな。
ついでにお宝でもゲットして、もっと豪華な宿に泊まってやる。
遺跡……クエスト……腕が鳴る。
お兄ちゃん……。
と、いうことで。
準備ができるまでオレは寝る。
おやすみ。
お兄ちゃん！！
