第３話 悪魔的おしごと
文字数 1,089文字
悪魔兄妹とちゃぶ台を挟み、課長のシェリーは続ける。
そんな、他人の絶望が大好きな魔王様だからこその、今回のお仕事なのよ
えっと、つまりどういう？
ロイズ君、あなたは勇者候補の７人に紛れ込むの。そして、魔王討伐の旅に出る――
有能な人間を仲間に加え、他の勇者を蹴落として進みなさい。
で、魔王様を倒せと？
……いや。倒す『フリ』を、か
さすがロイズ君、悪魔的思考能力が高いわね
え、ええ？ 一体どういう……
ロイズ君は、『魔王を倒した英雄』に祭り上げられる。国を挙げての祝福ムードよ。
……そうね、ついでに人間のお姫様と結婚なんてしちゃってもいいかもね
ほほう……
えっ。け、結婚……？
どうしたララミ？
う、ううん。何でもない……
そして。
人間どもの希望が頂点に達したとき、満を持して『魔王が復活』する――
同時に、オレが『悪魔の本性をさらけ出す』ってワケですね。人間の国を、外側と内側から崩壊させる……と。
なるほど、悪魔的ですね
悪魔的でしょう？ どう、やってくれるわね？
いや……。ううん、それでも、『勇者』になるなんて、オレのプライドが許さないというか、なんと言うか……
その気持ちは分かるわ。そうね、『一寸のゴミにもゴミの魂』って言うものね。ロイズ君にもゴミのようなプライドくらいあるわよね
課長、なんぼなんでもオレ、泣きますよ……
まあ、そもそもロイズ君に拒否権などないのだけれど。
それでも、優しい私はあなたにご褒美を用意しているのよ？
ご褒美？
臨時ボーナスよ。この悪魔アパートの家賃、５千年分を先払いしてあげる。私のポケットマネーでね
うおお!? マジすか神さま！ いいえ邪神さま！
あら、おだてるのが上手いわね、ふふっ。
――それから、管轄の悪魔税務署には話を通してあるから、あなたたち２人は６万年のあいだ無税よ
無税！
もちろん、それもこれも、このお仕事が成功したらの話だけれどね。どうかしら？
くっ、家賃と無税……しかし勇者、勇者かぁ……うぐぅ。
お兄ちゃんがこんなに真剣に悩むなんて……。
風邪を引いた私に、悪魔プッチンプリンを譲ってくれたとき以来……
――分かりました。引き受けましょう、その仕事
良かったわ。これで私も、魔王様の信頼と、将来有望な悪魔部下を失わずに済むわ。
さてと、それじゃあ――
ま、待ってください！
ララミ？
あ、あの……私も、私も一緒に行かせてください！
おい、危ない仕事なんだぞ？ そして胸くそ悪い仕事だ。勇者になるなんて
ロイズ君の言うとおりよ。平凡な悪魔ＪＣには務まらない、悪魔的なお仕事なのよ？
だって……
だって？
うう、だって……
何だ、はっきり言えよララミ
だって……！
兄と結婚するのは、私なので!!!!
