第24話 悪魔的過去①

文字数 976文字

おかあさん、ララミ! いってらっしゃい!
あうあうー。
はーい、いってきます。

ロイズもいってらっしゃい。
よし行こうか、ロイズ。
うんっ!

悪魔アパートの前で、ロイズは大きく手を振る。
ララミを悪魔保育園に連れて行く母と別れ、父とともに通学路に就いた。


――これは、とある家族の、とある日のお話。


ふふっ。
?? どうしたの?
いや、ようやくロイズも泣かないようになったんだなって。

ちょっと前までは、母さんと離れるとビービー言ってたのにな。
おとうさん!
それは子どものころの話だってば!
ははっ、悪い悪い。ロイズはもう立派な男の子だもんな。

共働きの両親、幼い妹。

裕福な暮らしではなかったが、ロイズ少年は、悪魔とは思えないほど温かな家庭で生まれ育った。

じゃーね、おとうさん。おしごとがんばって!
ああ、ロイズも学校、がんばれよ。

いつもの通学路。仕事に向かう父の背中を誇らしく見つめてから、ロイズは悪魔小学校に登校するのだった。

・・・・・・

その日の夕暮れ。

…………。
……遅いなぁ、おかあさん。

悪魔小学校から帰り、アパートのリビングでぽつんと座る。窓からの陽はずいぶんと傾いて部屋はうす暗い。

この時間、いつもなら母はララミを連れて帰宅している頃だ。

会社でなにかあったのかなぁ……。

母がどうしても忙しいときには、父が早く退社して帰ってくることになっているが、一向ににそのような気配はない。

もしも両親ともにトラブルに見舞われているならば、電話の一本でもありそうなものだが――それすらない。ララミの迎えも必要だ。

…………。

胸がざわつくのを感じながら、ロイズは膝を抱える。


コンコンコン……。
アパートの玄関をノックする音。古いインターフォンは壊れて久しい。

得体の知れない不安に駆られながら、ロイズは客を出迎える。

こちら、グリシュタッドさんのお宅で間違いありませんか?
……はい、そうですけど。
私、魔王城の悪魔人事課の者です。
まおうじょう……

――両親の職場だ。

幼い少年の胸は、得体の知れない動悸に襲われていた。

あの……ちちとははは、まだ帰っていませんが。
実は――そのことでお話があってまいりました。
…………。
大変言いにくいことなのですが――

暗い表情の男は、ロイズ相手にも慇懃な態度を崩さず、控えめな声で、しかしはっきりとこう言った。

お父さんとお母さんは……昇天なさいました。
天使になったのです――。
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登場人物紹介

ロイズ

不労所得をこよなく愛する悪魔。今は仕方なく勤め人に身をやつしている。
属性:怠惰

ララミ

ロイズの妹。非悪魔的思考をつかさどる悪魔。兄とは正反対で品行方正。
属性:色欲

ララミ(人間界バージョン)

非悪魔的なルックスで兄を困らせる。
そうび:出刃包丁

ガザリア

ロイズとともに選ばれた勇者の1人で、旧王家の末裔。驚異の胸囲を持つ17歳。
属性:傲慢

レニ

すえは大魔法使いとウワサされる少女。誰がウワサしているのかは知らない。実は人肌が恋しくて仕方がない。
属性:暴食

シェリー

ロイズの上司。悪魔的勤勉さでもって、若くして管理職にのし上がった有能な悪魔。
属性:強欲

魔王

部下を地獄の業火で焼き尽くすのが趣味。でも夜はM。
属性:??

ゴラザイアス

魔王の秘書。低級モンスターだが、その爪は一撃で人間の頭部を砕くことができる。しかし背が低いので頭部に届いたことはない。

使い魔(ヘビ)

残業が好き。

シノゥ

エルフ族の勇者。もと踊り子らしいが……?

属性:??

エンディ・ローンズ

もとトレジャーハンター。たぶん蛇とか苦手。

奥太郎

健全なオーク。同族からは知能派美男子と呼ばれる人気者。じつは簿記2級のスゴ腕。

カイト

温泉街のアルバイター。人を探している。

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