第24話 悪魔的過去①
文字数 976文字
悪魔アパートの前で、ロイズは大きく手を振る。
ララミを悪魔保育園に連れて行く母と別れ、父とともに通学路に就いた。
――これは、とある家族の、とある日のお話。
共働きの両親、幼い妹。
裕福な暮らしではなかったが、ロイズ少年は、悪魔とは思えないほど温かな家庭で生まれ育った。
いつもの通学路。仕事に向かう父の背中を誇らしく見つめてから、ロイズは悪魔小学校に登校するのだった。
・・・・・・
その日の夕暮れ。
悪魔小学校から帰り、アパートのリビングでぽつんと座る。窓からの陽はずいぶんと傾いて部屋はうす暗い。
この時間、いつもなら母はララミを連れて帰宅している頃だ。
母がどうしても忙しいときには、父が早く退社して帰ってくることになっているが、一向ににそのような気配はない。
もしも両親ともにトラブルに見舞われているならば、電話の一本でもありそうなものだが――それすらない。ララミの迎えも必要だ。
胸がざわつくのを感じながら、ロイズは膝を抱える。
コンコンコン……。
アパートの玄関をノックする音。古いインターフォンは壊れて久しい。
得体の知れない不安に駆られながら、ロイズは客を出迎える。
――両親の職場だ。
幼い少年の胸は、得体の知れない動悸に襲われていた。
暗い表情の男は、ロイズ相手にも慇懃な態度を崩さず、控えめな声で、しかしはっきりとこう言った。