第36話 悪魔的忠誠
文字数 1,473文字
9Fに残ったララミは、使い魔のガーゴイルたちと対峙する。
両手に唯一の武装、出刃包丁を握り、
11匹のうち、ひときわ巨きな体をしたリーダー格らしいガーゴイルが、低い声でララミに問う。
ララミの体が、力なく前方へとふらついた。
転瞬、ガーゴイルはララミの姿を見失う。
気づくと、小柄なバニーガールはガーゴイルの懐にまで踏み込んでいた。
ひたり。
ララミの出刃包丁が、ガーゴイルの喉元に触れる。
突然のことに、周囲のガーゴイルたちも動けずにいた。
うさぎの悪魔は昏い眼でガーゴイルを見上げる。
包丁を握るララミの手が、みしみしと音をたてる。すさまじい握力で包丁の柄を握りつぶさんばかりだ。
少女の笑顔とは裏腹に、刃に乗る殺気はいっそう鋭いものになる――
切っ先がガーゴイルの肌をつうっと滑る。喉元から胸へ、腹部へ――
ガーゴイルの体を恐怖が射貫く。久しく感じていなかったうら寒い感覚と、ララミの瞳に宿る昏くて深い闇が使い魔を浸食する。