第41話 悪魔的指摘

文字数 1,023文字

このパーティーには足手まといがいます!
…………はぁ?


ガザリアが突然声を張り上げたのは、宿の1階、酒場で夕食をとっている最中のことだった。


アーヴの街で2匹の悪魔を撃退したロイズたち一行は、魔王城に向けてさらに前進していた。


旅の道中では、レアな鉱石を拾って売ったり、商隊(キャラバン)の用心棒を請け負ったりして路銀を稼いだ。そのため、安宿に泊まるくらいの余裕はできたし、こうして、それなりの食事にもありつけている。


難点は数あれど、なんだかんだと戦力の高いパーティーである。あれから後は魔王直属の部下に襲われることもなかった。比較的、楽な旅路だったといえるだろう。



そうして今日の昼過ぎ、この小さな街にたどり着き、ここに宿を定めた。2階の部屋で荷をほどき、1階の酒場で丸テーブルを囲んで夕食に興じていた――そのときのことなのである。


あー、分かった分かった。


あとで聞いてやるから、ちょっとそこの皿取ってくれ。そう、その骨付き肉のやつ。

話が先よ!


ガザリアは皿を持ち上げて、ロイズの手から遠ざける。


あのなぁ、ここの代金、誰が稼いでると思ってるんだ?
――――。
ほとんど、レニちゃんじゃないかなぁ? 鉱石を掘り当てるのも、モンスター倒すのも、ほとんどが……。


うん、少なくともお兄ちゃんは寝てばかりで、お金は稼いでないよね。

そのとおり!


働かずに食っていく仕組み。オレが指示を出し、オレ以外の全員がオレのために稼ぐ。これぞ永久機関!

燃費悪いけどね、この永久機関……


言って、ララミは横目でレニを見る。


はぐっ、はぐっ、がふっ! がふがふがふ……!


レニは料理に夢中だ。皿に顔から突っ込んで、ほとんど野犬の風情である。


実のところ、この大食漢がもっと自制してくれれば旅の予算にもかなりの余裕が生じるのだが、ララミが指摘したように、その大部分をレニが稼いでいるため誰も文句を言えずにいる。稼ぎ頭は強い。


ま、育ち盛りだし――こいつ、発育が遅いからな。よく食って、よく寝せねーと。
発育……お兄ちゃんのえっち。
どこがだ、どこが。
レニにはもっと骨を丈夫にしてもらって、筋肉つけて、もっとガンガン働いてもらわないと困るんだ。
んがっ! ふごっ、がふっ……ん、んぐぐっ!?
レ、レニちゃん!?


お水っ! お水を!

ふふっ、強い子に育てよ……。
じゃなくて!


聞いてるの!?

あー?
ああはいはい、足でまといが何だって?


だから誰が――

決まっているでしょう!


ガザリアは自信満々に言い切った。


――もちろん、私よ!!
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登場人物紹介

ロイズ

不労所得をこよなく愛する悪魔。今は仕方なく勤め人に身をやつしている。
属性:怠惰

ララミ

ロイズの妹。非悪魔的思考をつかさどる悪魔。兄とは正反対で品行方正。
属性:色欲

ララミ(人間界バージョン)

非悪魔的なルックスで兄を困らせる。
そうび:出刃包丁

ガザリア

ロイズとともに選ばれた勇者の1人で、旧王家の末裔。驚異の胸囲を持つ17歳。
属性:傲慢

レニ

すえは大魔法使いとウワサされる少女。誰がウワサしているのかは知らない。実は人肌が恋しくて仕方がない。
属性:暴食

シェリー

ロイズの上司。悪魔的勤勉さでもって、若くして管理職にのし上がった有能な悪魔。
属性:強欲

魔王

部下を地獄の業火で焼き尽くすのが趣味。でも夜はM。
属性:??

ゴラザイアス

魔王の秘書。低級モンスターだが、その爪は一撃で人間の頭部を砕くことができる。しかし背が低いので頭部に届いたことはない。

使い魔(ヘビ)

残業が好き。

シノゥ

エルフ族の勇者。もと踊り子らしいが……?

属性:??

エンディ・ローンズ

もとトレジャーハンター。たぶん蛇とか苦手。

奥太郎

健全なオーク。同族からは知能派美男子と呼ばれる人気者。じつは簿記2級のスゴ腕。

カイト

温泉街のアルバイター。人を探している。

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