第29話 悪魔的代償
文字数 1,480文字
すん、すんすん……
ガザリアは、パチンコフロアの床で膝を抱えてすすり泣く。
ではお客様、冗談はこの辺にして今後のお支払いの話を――
は？
……え？
…………。
さ、さっきの本気だったんですね。お仲間なのに……。さすがは悪魔様。
うう……、ぐす……
していると、階上から――８Ｆフロアからレニが降りてきた。
♪～～
何やら上機嫌だ。片手に大きな革袋をふたつぶら下げ、口には悪魔チュッパチャプスを加えて鼻歌モード。
こちらに気づき、座り込むガザリアと、ロイズの顔を見比べた。
…………。
なるほどなるほど。
これはわたしの出番的な気配。
おまえが絡むとややこしくなる。お子様はちょっと待ってろ。
む。
そんなことはない。
話は簡単。
？？
レニは革袋をずいっと差し出した。
ん。
なんだこれ――
って、ただのお菓子じゃねぇか。景品かよ。
ちがう、そっちじゃない。
あん？
ロイズはもう一方の革袋を開く。
すると――
うおお！？
なんだこの金貨！！
ざっと６６万Ｇ。
おまえ……まさか！
返して来い！
いいか、おまえのやった事は『強盗』っていうんだ！ オレはおまえをそんな子に育てた覚えはないぞ！？
……こういうときだけパパっぽい。
ちがう、稼いだ。
と、階段から使い魔のスタッフが、
う、ううう……！
お、お客様、この子を連れて帰ってくださいぃ……！
うおっ、なんだよ、すがりつくな。
……どうしたんだよ、おまえレニを連れて行った使い魔だよな？
はい……
どんなギャンブラーでも音を上げる地獄スロットで――このロリ娘を借金漬けにして丸裸にして、首輪と尻尾をつけて私のロリペットにしようと画策していたのですが……！
おまえさらっとエグい性癖公開すんなよ。
絶っっっ対に、人間の動体視力では捉えられないはずのリールの回転も……絶対に押すことのできない硬い硬いストップボタンも……ダメだったんです、ダメだったんですぅ……！
――悪魔的なスロットマシンだってことは分かったが。
ああ……そんでそういうことか。
ため息をついて、レニを見る。
わたしの動体し……こほん、魔眼にかかればあんなもの、たやすいたやすい。
イスだって――座っているだけで体力と集中力を消耗する特別仕様だったんですぅ……！
無駄だ。このエリート武闘家さまには通じないぞ。
武闘家ちがう。
いって！ ローキックやめろ！
痛い、見た目より重いからおまえの蹴り！
えーっと……。
もしかして、そちらの小さなお客様が、こちらのポンコツ女王様の借金を肩代わりして頂けると――そういうことでしょうか？
……そういう、ことなのか？
こくり。
ママの……
ガザリアママのお尻は、わたしがモミモミする。
？？？
――もしかして尻ぬぐいって言いたいのか？
それそれ。
わたしがお尻をフキフキする。
おまえもうそれワザとだろ。
――ってことらしいぞ、ガザリア。
あう………
ぽかんとして、涙顔を上げるガザリア。
しゃがみ込んだレニが、彼女の頭をよしよしと撫でる。
レ、レニ……！
こうかんじょうけん。
え……
も、もちろんよ。何でも言ってちょうだい？
ちちすわせろ。
ふぇえええ！！？
ちょっとレニ、レニちゃん！？ 服の中に潜り込んで来ないで？ ああっすごい力！
……あっ、
ふやんっ！ そ、そんな的確に！！
けっきょく体で払うんじゃねぇか。
じょうだん。
そんなしっかり顔を埋められたあとで言われても！
わたしの中に潜む淫魔の血が、そうさせた。
いやそれただのオッサンの血だわ。
――ふん。
おおかた母親が恋しくなったんだろう、このお子様は。まあ甘えさせてやれよ。
って！
だからローキックやめろ！ 骨が折れるわ！！
ちーん！
◆ガザリアの借金を完済した！
◆レニの抱き枕（ガザリア）がひとつ増えた！
