第55話 悪魔的哄笑
文字数 1,843文字
奥太郎の巨体が石段を転がり沈黙する。
駆けよりそうになるシノゥを、血塗れの手で制してエンディは傲岸に笑う。
エンディの扱う鞭が、シノゥの支配下にあったガザリアを絡めとり拘束する。蛇が絡みつくような動き――意思を持ったかのようなエンディの鞭。
エンディの背後から怪しい気配が立ちのぼる。ほのかな、煙とも光ともつかないそれは人型を成していく――。
悪魔ジグが鞭を持つ手を挙げると、ガザリアを拘束する力が一層と増す。
悪魔の操るエンディのブーツが、身を起こそうとするロイズの顔面を蹴り飛ばす。シノゥのほうへと転がりロイズは、すがめた眼でジグをにらむ。
そりゃそうだろうよオイ。悪魔では触れられない聖剣、聖櫃――じゃあ人間共を利用して手に入れればいいってなモンだろうよ。
ひっ。いい形してるじゃねぇかよぉ……天使の羽虫どもも、たまにはいい仕事するじゃねぇか、なぁ!!
ガザリアの背後に回ったジグはその鞭で彼女の体を操り、聖剣WLBをかざす。
ジグには魅了が効かない。魔力値が高すぎる。だが、シノゥのターゲットは悪魔ではなかった。
聖剣WLBが床に落ちる。
と、同時――
ロイズは床に散らばった、ガザリアの愛剣の破片を取ってジグへと鋭く
白刃の破片は、ジグの――エンディの肉体の――顔面をかすめ、短い悪態とともにジグはのけ反る。
その隙にシノウの命令で動くガザリアがまろびそうな足で駆けよってきた。
シノゥが抱きすくめた瞬間。ガザリアが、ひひひ、と笑った。
人を