第51話 悪魔的トラップ
文字数 1,821文字
醜態から立ち直ったエンディは咳払いをひとつ、今度は慎重に先へと進んだ。登りの傾斜がある狭い通路だ。
そもそもここが発見されたのが最近だからな。
その聖なる魔力がこのダンジョンの奥から漏れ出ている……どうやら最近、魔王軍の動きが活発だろう？ おそらくそいつに刺激されて、聖剣も息を吹き返したんじゃねぇかと俺は睨んでるね。
さすがにドラゴンたちは、ロイズの〈怠惰の渦〉で無力化して先の部屋に置いてきている。
……ふん、その調子で『ドロドロのぐちゃぐちゃな夜』を過ごしたってわけか。
うーっ、と
身をゆすったまさにそのタイミングで完全に魅了の効果が切れ、勢いあまってガザリアは、後頭部を壁で強打する。
ひときわ大きくなる地揺れと音。通路の先、坂道の行き当たりに巨大な岩がごろりと――体感的にはずしんと転がって――現れた。
球状の岩塊。ちょうど通路をいっぱいに塞ぎ、傾斜に沿って、ゆっくりとこちらへ――
転がる岩は加速する。５人を押し潰さんと転がってくる。通路全体を揺らしながら巨体が速度を増して迫る！
エンディを先頭に、シノゥと奥太郎は狭い横道へと右折して逃れる。
――が、ロイズとガザリアは時機を逃し、３人とは分断されてしまう。
ドラゴンと遭遇した部屋まではまだ遠い。ロイズの足では追いつかれる。
岩に押し潰される――という寸前のところで、ガザリアはロイズの腕を引っぱり左に折れて、エンディたちとは別の横道に逃げ込んだ。
って、えええ！？
通路からひょいと顔を出したガザリアが見たのは、坂の上からさらに転がってくる同様の岩塊だった。
轟音とともに、頭を引っ込めたガザリアの眼前を転がり落ちていく。
……ロイズ？
ロイズは壁にもたれたまま、右手を差し出す。
ロイズの頭頂部にガザリアのチョップがきれいに決まった。
