第30話 悪魔的パーティー
文字数 1,980文字
そのとき――
『あは、あはははは――!』
演技がかった哄笑を中断し、ミストアは怪訝な表情をモニターへ――というより、恐らくカメラと、そのカメラマンの使い魔に向けて、
『これ……きちんと映っているのかい? 生中継なんだよ生中継。映像や音声にトラブルがあったら大変なんだよ?
……なに?
「もう10回もリハしたじゃないか」って?
あのねぇ! ヒューマンエラーは、いいや、デビルエラーはいつだって起こるんだよ! そのとき君は責任取れるの!? すぐに確認を!』
にわかにモニター向こうの現場が騒がしくなって、映像も乱れる。
バニーガール姿のままララミは、手首を天井からの鎖に縛られ、ぐったりとしている。
液晶モニターが映し出す9Fの映像。
暗闇の中で、使い魔の赤い眼がひしめいている。
『逃げ出すのもいいでしょう。尻尾を巻いて、家族を見捨てて、今すぐ引き返したって構いません。
……いいえ、むしろそのほうが悪魔的というもの。先輩のお望みどおり、天使のごとき愚者からは、ほど遠い所業です。
どうぞお好きな方をお選びください……あは、あはは、あはははははは!』
プツリと映像は途切れ、パチンコフロアの喧噪だけが残る。
使い魔の待ち受ける9Fへの階段へと、ロイズは視線を向ける。
――と。
ガザリアがロイズの前に立ちはだかる。
ガザリアは腰にたずさえた剣の柄に、右手を添える。
ガシガシと頭をかいてロイズは、ガザリアの視線からのがれるように顔をそむけ、
柄を握る手に力を込めてガザリアは――
ふっと、全身から力を抜いた。
……私も、ソリッシュ家の復興のためなら今の王家には滅んでもらったほうが都合がいいしね。
でもロイズ! あなたがもし、罪のない私の可愛い国民に手を出そうって言うんなら、そのときは斬って捨てるからね。魔王だって、私が本当に倒してみせるから。
言って、2人はVサインを突きだした。