8.高校時代:理科室での出来事

文字数 1,486文字

私のお漏らしに気が付いた先生は慌てました。始めは、「あ~、あ~」といっているだけだったのですが、名案を思い付いたかのように言いました。
「あ~、青澄、体育着か何か着替えを持っていないか?」
私は俯いたまま首を振りました。
「そうか」
暫く、考えていたようですが、理科準備室に入って実験用の白衣とビニール袋を持ってきました。
「青澄、準備室でこれに着替えろ。濡れた衣類はこの袋に入れろ。ここは、先生が拭いておく」

私は言われた通りにして準備室から出てくると、先生は雑巾で床を拭き終わったところでした。そして、しゃがんだまま私の素足を見て言いました。
「裸足じゃまずいな」
そして、視線を足から、腰、胸、と少しずつ上げていき、俯いている私の顔を見上げました。そこには、先生とは思えないような、なんとも困ったような顔がありました。そして、ぎこちなく立ち上がると、股間に手を当てて何やら動かしているのです。私は思わず、「アッ!」と、声をあげてしまいました。明らかに先生のズボンが盛り上がっていたからです。

先生は慌てて両手でズボンの前を隠し、少しうろたえた様子で、「ちょっと待っててくれ」と言って準備室の方に行ってしまいました。暫くして出て来た時は、先生も白衣を着ていました。その時は、もう恥ずかしさよりも、先生の子供じみた細工がおかしくて、笑いをこらえるのに苦労しました。先生はと言えば、真面目な顔をして、準備室から持ってきた汚いスリッパを差し出して言いました。
「取り敢えず、これを履いてくれ。それで~、青澄、家は近いのか?」
「中木です」
「家に家族はいるか?」
「この時間は婆ちゃんだけです」
「そうか。じゃ、車で送って行く」

先生は、理科室のドアを開け、周りを見回すと、私に目配せしました。放課後の静かな廊下を白衣を着た二人がそそくさと歩く。なんだか三流の探偵映画の場面のような変な気分がしました。駐車場に出ると、先生は自分の車に私を乗せ、すぐに中木に向かいました。途中、先生はまだおさまりが悪いようで、両足を動かしたり、股間に手をやったりしていました。私はと言えば、その頃異常に高まりつつあった好奇心に駆られ、先生のズボンの中を見たいという気持ちで一杯でした。「どうなっているんだろう?」と。そして、一人遊びで培った常識の無さと相まって、思いもかけない行動に出てしまったのです。信号で車が止まった時、おもむろに白衣の裾をはだけて、素肌の両足を開いてみせたのです。私はこの時初めて、「目が飛び出る」と言う表情が実在するのだという事に気が付きました。今でも、こちらを向いた時の先生の視線を忘れることが出来ません。その間に信号は青になり、後ろの車からラッパを鳴らされました。それで、先生は我に返ったように前を向き車を走らせました。そして、暫く、完全に困惑した子供のような顔をしていましたが、煮え切らない様子で言いました。
「もし、こんな事態が学校関係者に知られたら、俺は即刻クビにされてしまう。青澄......、お願いだから、今日の事は誰にも言わないでくれ」
そして、その後に、ものすごく小さな声で、「見たい......」と呟いたのです。当然、耳の良い私にははっきり聞こえていました。「それなら、もう少し見せてあげようかな......」と思った矢先に、先生は観念したように言いました。
「青澄、運転に差し支えるから、その白衣をきちんと閉じておいてくれ」
正直言って、私はがっかりしました。と同時に、先生がクビになってしまったら、とても弁解の余地はない、とも思いました。それで、言われた通りに白衣の裾を閉じました。
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