6.中学時代の興味

文字数 1,469文字

私にとって、ジョージと遊んだ二日間は余りに楽しく、また遊べることを期待していました。残念ながら、その後、その家族は一度も来ませんでした。それで、また、いつもの静かな夏休みに戻ってしまいました。

中学生になっても、私の夏休みは相変わらずでした。海と山の自然を相手に一人遊びの毎日でした。ただ一つ変わったことは、入学祝いで貰った大量の色鉛筆を使って、海や山で観察した動植物の絵を非常に詳細に描けるようになってきたことです。海の中で写生は出来ないので、覚えてきて家で描きます。もし、分からない部分があれば、しつこく何回でも海に戻って、出来るだけ正確に描くようにしました。

それから、その頃からは、流石に水着姿で集落の周りをうろつくのが恥ずかしくなってきました。それで、水着の上にシャツとトレパンを着るようにしました。ただし、私の体はまだ発育不全気味で、ほんとは、その未熟な体を覆い隠すのが目的でした。いずれにしても、実際には、私の体の事なんか誰も気にしていないことも承知していました。

裏山に行くときは、スケッチブックと色鉛筆を持っていくことが出来るので、じっくりと色々な動植物を見ては沢山の絵を描きました。段々と、見ているだけで、動物の姿を脳裏に焼き付けて、それをかなり正確に描くことが出来るようにもなりました。また、父親が、動物図鑑を買ってくれたので、自分の絵と図鑑を見比べるということも始めました。それに、学校では美術部に入ったので、写生の技量は格段に上がりました。

それから、これは、あのキャンピングカーの男の子、ジョージの影響なのですが、裏山に行くと、時々、人から見られないような場所でおしっこをするようになりました。初めは少し抵抗がありましたが、慣れてしまうと気分がいいものだということが分かりました。みんな、おしっこを汚いもののように振る舞いますが、ジョージの言った通り、ごく自然な事です。海の中では生物が皆、自分たちの排泄したもののさなかで生きている訳です。それに、動物の排泄物は、ごく小さな動物や微生物の餌にさえなってさえいるはずです。そう思うと、おしっこ自体に対する感覚が変わってきました。

ある時、裏山でしゃがんで用を足していると、目の前で、水玉模様のあるカミキリ虫が二匹重なり合ったいるのを見ました。それからは、急に似たような光景に注意が向く様になりました。緑色のトンボが二匹空中でくっついているのを見たり、茶色のカメムシが二匹反対向きにお尻をくっつけているのを見たり、そして、集落の犬が二匹、馬乗りのようになっているのに気が付くようになったのです。そうして、私は動物の生殖にも興味を持つようになりました。その頃中学で習った進化の事とも関連して、依然疑問に思っていた、自然界の多様性に対して、さらに興味が深まって行ったのもこの頃です。生物が何世代も何世代も子孫を作っていくうちに、種の多様性が生じるなんて、あまりにも気の遠くなることでした。

それと同時に、人間の生殖、男女関係についても好奇心が高まりました。町に買い物に行く時には、本屋で、密かに、恋愛ものとかエッチな少女漫画を買ったりするようになりました。ただ、ずっと一人遊びが過ぎて、社交性の乏しい性格は相変わらずでした。特に、男の子とは全く仲良くなれませんでした。それで、自分の事はさておき、学校の男の子は田舎臭くて興味が湧かないとか、勝手な言い訳をして、自分を慰めたものです。そして、私には、東京のジョージと言う王子様が待っているんだと、非現実的な空想を描き続けていました。
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