7.高校時代:部活中の寄り道

文字数 1,200文字

高校の時は、陸上部に入りました。私の高校は、県立高の小さな分校なので、片手で数えるほどしか部活がありませんでした。それで、それほど好きでもなく、得意でもないのに兎に角、所属していたのです。部活で主にすることは、長距離走で、学校の周辺を走ったり、実は歩いたりと言った状態でした。また、寄り道をすることもしばしばで、皆でチョコレートのアイスクリームを買って食べたりしたこともありました。

その日は、用事で出遅れ、一人で走っていると、珍しい緑色のアゲハ蝶が目に入りました。自然に興味のある私にとっては、ほっておけないようなものでした。それで、アゲハ蝶を追って、コースからはずれ、草むらの方に走って行きました。残念ながら、そのアゲハ蝶は途中で見失ってしまいました。仕方がないのでコースに戻ろうとした時、どこからともなくタバコの匂いがしました。あまり人気のない所だったので、少し心配になって、木陰に隠れて様子を伺いました。すると、タバコを吸っていたのは、陸上部の先輩だということが分かりました。ほんとに、たいそうな陸上部です。まぁ、タバコは終わるところだったようで、ポイっと地面に捨てて足でもみ消しました。そして、その直後に、おもむろにトレパンと下着を一緒に降ろし、おしっこをし始めたのです。

これは、好奇心の塊だった私にとっては見逃せない代物でした。あまりに刺激と興味が強すぎて、目が釘付けになってしまったのです。その情景が、カメラのように発達した私の脳裏にしっかりと焼き付いたことは言うまでもありません。用を足すと、先輩は鼻歌を歌いながらコースに戻って行きました。私は暫くその場で立ちすくんでいましたが、興奮している心が静まるのを待って、コースに戻りました。そして、家に帰るとすぐに、見た物を描いたのです。あまりに印象が強かったので、肝心の部分をとても詳細に描きました。

それから何日か経った日の放課後、私は理科室の掃除当番でした。そして、掃除の後、一人そこに残りました。教材として飼育中のイグアナの絵を描きたいと思ったからです。真剣になっていて気が付かなかったのですが、いつの間にか理科の先生が後ろに立っていました。はっとした時に、先生は言いました。
「青澄、随分と写生がうまいな。生きているようじゃないか」
「あの~、子供の頃から退屈な生活だったので、いつも動物の絵を描いていたんです」
「そこにあるのは、他の絵か? ちょっと見ていいか?」
そう言って感心するように、パラパラと絵を見ていた先生の手が急に止まりました。その時、私の心臓も止まるかと思いました。それは、例の、先輩がおしっこをしているところを描いたものだったからです。その時は、どうしてその絵を隠しておかなかったのかと非常に後悔しました。そして、恥ずかしさのあまり、逃げだしたくなりました。その時は、もう手遅れでした。両足の間に生暖かい感じがしたのです。
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