34.湿疹の苦しみ

文字数 1,781文字

その後、更に困ったことに、平也に湿疹が出て、日増しにひどくなってきたのです。湿疹は、顔から、両腕、両足、そして、胴体へと広がっていきました。かゆいのでしょう。平也はそれをかこうとしているみたいなのですが、まだ、うまく手を動かせず、泣きわめくことが多いのです。代智の両親や、灰床夫妻、そして、学校の同僚に助けを求めたり、本を買って調べたりもしました。何かしらのアレルギーかもしれないと言う事で、お医者さんに診てもらわなければならないかとも思いました。ただ、同僚の一人が、小さい子供の湿疹の治療は難しいし、いたずらに医療機関に行かない方が良いと言われ、これも実行せずにいました。

調べている間に、肌が乾燥していることが問題だと言う事は分かりました。熱いお風呂に毎日入るのは、肌を乾燥させてしまう事になるという事も読みました。それで、ぬるめのお風呂に一日おきに入れて、一日に何回もクリームをつける様にしました。それでも、その後何週間、何か月と経っても、一向に良くはなりませんでした。そのせいか、平也の機嫌が悪くなってきたように思いました。私の方もぐっと疲れが出てしまいました。

そして、驚いたことには、この私にも湿疹が出てきたのです。顔は全体が赤っぽくなっただけなのですが、手足と胴体に、平也と同じようなボツボツが出来てしまったのです。私は、全くアレルギー体質ではないと思っていたのにです。それに、田舎の自然の中で育つとアレルギー体質にはなりにくいと言う事を聞いたこともあります。仕方がないので、今まで、平也の湿疹にしてきたような事を自分にもしてみました。私の場合、ヒスタミン剤とか、対処療法も試してみましたが、眠くなったり、副作用の方が多くて、効果はありませんでした。結局、何週間経っても良くなりませんでした。

その内に段々と気が付いてきたことがあります。それまで、肌の乾燥とかゆみを避けるためにと、むきになってクリームを付けていたのですが、付けすぎて、べとべとになって、死んだ皮膚や空気中の汚れまでそこに付着していたのではないかと言うです。これは、私の想像ですが、ひょっとすると、クリームによって付着したあらゆる物質が、逆に肌を刺激していたかもしれないのです。そう言う意味では、湿疹でかゆくなるのは、無意識に、刺激物や死んだ皮膚を取り除こうとしているのではないかと思い始めました。それで、今度は、毎日、20分間、ゆっくりとお風呂に入って皮膚をふやかし、死んだ皮膚と汚れを優しく、それでも、しっかりと取る様にしました。ただし、やはり、入浴後に肌が乾燥しないように、入浴後三分以内に、かなりべっとりした、ワセリンを必要最低限だけ付け、その後は、次の入浴後までは、何も付けないようにしました。

その方法で、私の湿疹は徐々に良くなりました。それで、同じことを平也にも試してみました。平也の場合は、私より時間が掛かりましたが、やはり、良くなってきました。不思議なものです。私は、平也の湿疹を直すために、自分が実験台になっていたのではないかと思いました。湿疹が良くなってくると、平也の気分も幾分良くなってきたように思えました。かなり時間はかかりましたが、後から考えると、皮膚科に行ってステロイド剤とかを使わされるより良かったのではないかと思いました。副作用が怖いらしいのです。

これで、湿疹については、取り敢えず、最悪の状態から抜け出る事が出来ました。そして、私たちの湿疹がアレルギーかどうか、はっきりはしませんが、この経験を基に、私なりに、アレルギーについての理解が深まったような気がしました。アレルギーとは、身体が悪い癖を身につけてしまうような事だと思います。つまり、体調の悪い時に、たまたま居合わせた、ほんとうは無害な物質を体調の悪い原因だと誤解してしまって、その後も、その物質に過剰な反応をしてしまうのだと思います。何にしても、悪い癖を直すのは大変な事ですが、効果的な方法を見つけて努力すれば、不可能ではないはずです。同じ事が、アレルギーについても言えるのではないでしょうか? 無害な物は無害だと身体が再学習することによって、アレルギーは治せるのでは、と考え始めました。それにしても、アレルギーの一番の予防は、身体が悪い癖をつけないように、体調を常に整えておく事だと思いました。
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