第三章;第七話

文字数 2,579文字

 家に帰るがお母さんとお姉さんは、まだ帰っていなかった。
「お母さんたちまだ帰ってないんだ。まあいいや、恭也、入って。」
 僕は恭也を家の中にいれた。

「買ったものはテーブルの上に置いてね。そしたら居間で待ってて」
 恭也はテーブルの上に置き、そして居間に行った。
 僕は冷蔵庫を開けて、お肉や野菜を入れだした。
 全部を入れ終わるとお茶を入れて恭也に持っていく。

「恭也、今日はありがとう。部屋で着替えてくるから待っていてね」
 そして僕は部屋に行き着替えに行った。
 部屋に入り普段着に着替えようとするが、何を着るかを悩む。
 いつもなら手にしたものを着るのだが、何でもいいやと思うのだが、今日は家に恭也がいる。
 そして一緒に食事に誘ってしまった。
 普段はすぐに決めちゃうのに、恭也がいるからという理由で服が選べない。

 制服を脱ぎ、しわにならないようにきれいにしてハンガーにかける。
 そして下着を脱いで新しい下着に替える。
 自分の汗のにおいとか気になりだして、制汗剤を脇に塗ったりする。
(もう・・・どうしよう・・・)
 慌てると服がさらに決めることができない。

 ただ恭也が家に来ているだけ。ただそれだけ。
 僕は気持ちを落ち着かせて、目を瞑り、(今から着る服はこれだ!)と服を選んだ。
 そして目を開ける。
 え~!この服?もっと他に無いかな。と、選んだ服を放り投げ、
 僕は違う服を選ぼうとするのだった。
 やっと決めて服を着る。
(よく考えたら、なんで下着まで替えたんだろうね・・・)
 今日の僕はやっぱり変だ。

 鏡に映る僕を見て、いつものように気になりだす。
(髪が・・・)
 もういい!これでいい!
 部屋を出ようとするが、また鏡を見る。
 何やっているんだろうね・・・。
 深呼吸をして僕は部屋を出た。

「恭也、遅くなってごめんね」
 僕は恭也を見た。恭也がなぜか赤くなっているように見える。
 やっぱり僕の服選びはおかしいのかな?

 居間にある四角いテーブル
 大きいように思えていたけど、なぜか恭也といると小さい感じがする。
 恭也との距離が近い気がする。
 こういうことは意識しては駄目だ。
 僕の身体はなぜか敏感に反応するからだ。
 恭也との距離、そして息遣いまで聞こえてくる感じがする。

「恭也くんごめんね。お茶入れるね。」
 恭也の湯飲みにはお茶が入っていなかった。
 僕も何か飲みたかったからすぐに台所に行った。
 やっぱり恭也と一緒に居ると緊張するのかな。
 心臓がドキドキ言ってる。そして体が熱くなる。
 なにか話をしようと思うけど、話ができない。

 僕は恭也の気持ちを知った。

『恭也、こんな僕は嫌い?』
『結さんのことは大好きです』

 なんで恭也にあんなこと聞いちゃったんだろう。
 僕は恭也の気持ちは十分に知っているはずだ。
 だから恭也から言わせないようにしないといけない。
 それなのに、恭也の口から言わせてしまった。

 もちろんあれは告白ではないと信じたい。

『しっかり考えたほうがいいよ。遠い未来の話じゃないと思う』
 お姉さん・・・やっぱり恭也から告白されたらと思うと怖いよ。

 僕は急須と電気ポットを持っていった。
「恭也くんごめんね。結局持ってきちゃった」
 恭也が笑う。その笑顔を見てると僕も嬉しくなる。
「結さん、謝らないでいいですよ。湯飲み持っていったのに、結局、持ってきちゃったんですね」
「あれ?恭也の湯飲みどこに持っていったっけ・・・」
 恭也が台所の方を指差す。
「湯飲み持って行って、急須とか持ってきて、湯飲み忘れた」
 恭也がさらに笑う。
 僕は恭也の湯飲みを持ってくる。
「恭也、笑いすぎ」
 僕も恭也につられて笑い出す。
 なんか恭也といるとすごく楽しい。

 やっぱり僕は恭也の事が好きだ。

          ☆彡

「恭也、僕は全国大会と合宿、どうしても行きたいんだ」
 僕は再度、恭也にお願いした。
「あれ?結さんからもう聞いていますよ?」
 買い物に行くときに僕は話をした。
 でも僕は恭也にしっかりと納得してもらいたかったのだ。

「8月1日から岐阜県。僕とアーチェリー部の顧問と付添人の恭也。
 大会が終わったらそのまま長野県に行き10日まで合宿。
 恭也の宿泊先は私たちや学校で手配するからお願いします!」
 僕は恭也に頭を下げてお願いした。

「結さん、大丈夫ですよ。一緒に行きます。だから頭を上げてください。」
 恭也は絶対に一緒に行くと言うのは判っている。
 でもしっかりとお願いしたいんだ。

「結さんのお母さんやお姉さんにも僕は約束をしました。
 結さんをしっかりと守っていきますって。
 だから僕は一緒に行きます。
 由依お姉さんも結さんの付添人になってると思います。
 それでも結さんと僕は一緒に行きたいんです。
 だから絶対に他の人には頼まないでください。
 僕が結さんと一緒に行きます。」

 恭也、ありがとう。
 恭也が言ってくれるのは知っているよ。
 そして僕の事を想ってくれる事も知ってる。
 だけどね僕は恭也の気持ちに答えられないんだよ。
 恭也の気持ちに答えてあげられないんだよ。

 本当は恭也に頼まないで、お姉さんに頼もうって思っていた。
 でも僕には恭也と一緒に行きたいという気持ちがあるんだ。
 恭也と一緒に居たいって思っているんだ。

 僕は恭也の気持ちに答えれないけど、僕は恭也と一緒に居たいんだ。

 とっても酷いことを僕は言っているんだよ。
 僕は恭也に酷いことをしてるんだよ。

 本当にごめんなさい。恭也・・・。
 でも本当にありがとう。

「結さんは夏期講習はありますか?僕はあるんです。
 赤点は取っていませんよ。普通の夏期講習です。
 7月の夏休みに入ってから夏期講習に行って。
 そして、1日の何時に出発するんですか?
 間に合うようにしないといけませんからね。
 遅刻しないといけないですね。
 結さん、大丈夫ですか?体調が悪いですか?」

「僕も夏期講習があるから夏休みも一緒に登校だね。」
 恭也は笑って僕に言った。
「はい、夏休みも結さんと一緒です。」


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登場人物紹介

三浦大輔(みうらだいすけ);県立城北第二高校1年生。

恭也の親友。現実派。母親と姉の事が嫌い。

三浦 結(みうら ゆう);私立城北第一高校1年生。

大輔の従妹ということになっている。

勝気で短気・頑固。涙脆い。正義感が強い。

佐伯恭也(さえききょうや);県立城北第二高校1年生。

大輔の親友・小学校4年生からの幼馴染。三浦結が大好き。

三浦翔子(みうらしょうこ);私立城北女子第三高校の教師。

三浦由依・大輔・結の母親。

三浦由依(みうら ゆい);私立城北第一高校2年生。

三浦大輔・結の姉。

鈴木太一(すずきたいち);私立城北第一高校1年生。

負けず嫌い。未来の幼馴染。結のクラスメート。

四谷未来(よつや みく);私立城北女子第三高校1年生。

太一の家の隣に住んでいる。幼馴染。太一に恋心有り。夢見る乙女。

田端美耶(たばた みや);私立城北第一高校1年生。

いつも本を読んでいる。自分の伝えたい言葉を格言や台詞を使い話す。

佐伯 智(さえき とも);市立北浜中学校2年生。

佐伯恭也の弟。見た目は女の子だが完全な男の子。

結のことが大好き。

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