第二章;第十四話

文字数 2,046文字

「結ちゃんと恭也くんのこと何とかしてあげたいね」
 未来が僕にそう告げる。
 僕だって結と恭也の事は何とかしてあげたいと思う。
 お互いに好きだと知っているのに、
 どうしようもないってどういうことなんだ。

「結は頑固者だからなあ。」
「でもさ、頑固者で片付けれるような感じじゃないよ?
 結ちゃんってなんか違う気がするの」
 未来の言う違った感じとはどういう意味だろう。

 違っていると言えば結くらいのレベルになると、
 僕たちとはすべてが違っている。

 同列に論じられない。・立ち位置が違う。
 桁違い。・程度が違う。・レベルが違う。
 次元が違う。・月とスッポン。・感覚が異なる。
 次元が異なる。すべての言葉が当てはまるのだ。

「美耶さんに相談してみるのはどうかな」
 未来はバーベキューのときに美耶と話していて
 とても知的な人で頼りになる人と思っていた。
 そして相談にのってもらおうと常に考えていたと言うのだ。

 しかし僕と美耶の出来事の事は知らずに居た。
 僕は美耶と図書館であったことを未来に話した。
「太一・・・。もう本当に何やってるの?
 すぐにでも美耶さんと仲直りしてきなさい!」
 未来に叱られて僕は美耶と仲直りをしにいくのだった。

 昼休み、A組の教室に行く。
 美耶は食事を終えて、
 教室に帰ってくるところを捕獲に成功。
 僕は美耶に謝るのだった。

「私のほうこそ大人げなかった。ごめん。」
 美耶の一言で仲直りミッションが無事に終了するのであった。
「太一くんさ。未来さんから言われたんでしょ。仲直りしろって」
 よくもまあ僕の事をご存知で。

「予想するに、未来さんと無事に恋仲になった。
 そして私に相談することがあったが現在喧嘩中。
 未来さんから怒られて仲直りしろと言われる。
 図書館での一件もあり、
 図書館では謝りにくいから教室で待ち伏せした。
 これで合ってる?」

 はい。全くその通りでございます。
 美耶にはすべて見透かされていた。
「それで私に相談事って何かな?三浦結のこと?」
 僕が何も言わないままで、
 そこまで美耶に言い当てられると逆に気持ちが良い。

「正解。三浦結のことだ。美耶は結の事はどう思う?」
「どう思うって同じクラスじゃないし、
 よく見ているわけじゃないからよくは知らないわ」
 確かにその通りだ。
 同じクラスの僕でさえ結の事をよく知らないのに、
 違うクラスで他人に興味を示すことのない美耶に、
 結の事はどう思うという質問は愚問だった。

「敢えて言うなら、私の個人的な感想になるのだけれど、
 結さんの事は知ってはいけない気がするの」
 美耶は結に対して何を感じたのだろうか?
 美耶の言うことはよく判らない。

「自分でも言っていることは判らないんだけど、
 結さんの悩みは、私たちの悩みと次元が違う。
 そして絶対に解決することが出来ない。
 だから結さんは常に苦しんでいる。
 そしていつも家族が支えている。
 二高の男子でさえ、結さんの悩みに触れられない。
 気持ち的に肉体的にも、両方の悩みを背負っている。
 だから他人に如何こうされて解決できないと思う」

 自分で解決できない。
 誰も助けることが出来ない。
 そんなことってあるかよ。
 そして常に苦しんでいるってどうすればいいんだよ。

「どうすればいいのかって?
 どうすることも出来ないから悩んでいるんじゃないの?」
 確かにその通りだ。
 僕たちの普通の悩み程度なら
 結には簡単に解決するのであろう。

「結の家族と話は出来ないのかな?」
「太一くん、絶対にやめておきなって、
 そっとしておいたほうがいいということもあるんだよ」
 結の力になることがそんなに駄目なことなのか?
 友人を助けたいって思いたいと思わないのか?

「普通の人なら助けれるかもしれない。
 友人として助けてあげたいと思う。
 でも太一くんも気が付いているでしょ。
 結さんは次元が違う人なんだって。
 二高の男子も気が付いているんだよ。
 だから結さんが話してくれるまで待っているんだよ。
 今はそっとしておくのが一番なんだよ」

 僕は美耶の言葉をそのまま未来に伝えた。
「美耶さんがそういうのなら仕方がないね」
 未来はそう答えた。
「未来、本当にこれで終わりなのかな。
 なにか結に出来ることってないのかな」

「友達だからなにかをしてあげたいと思う。
 しかし友達だからこそ、
 そっとしてあげることも重要なんだと思う。」

 僕の物語はこれで終わりだ。
 とても心残りな終わり方に僕自身も残念だ。

 結と恭也は僕に未来と言う素敵な贈り物をくれた。
 僕は未来をずっと大切にしていく。
 大切に守っていく。
 守っていきたいと言う願望なのではない。

 結と恭也に約束する。
 僕は未来を幸せにする。

本当にありがとう

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登場人物紹介

三浦大輔(みうらだいすけ);県立城北第二高校1年生。

恭也の親友。現実派。母親と姉の事が嫌い。

三浦 結(みうら ゆう);私立城北第一高校1年生。

大輔の従妹ということになっている。

勝気で短気・頑固。涙脆い。正義感が強い。

佐伯恭也(さえききょうや);県立城北第二高校1年生。

大輔の親友・小学校4年生からの幼馴染。三浦結が大好き。

三浦翔子(みうらしょうこ);私立城北女子第三高校の教師。

三浦由依・大輔・結の母親。

三浦由依(みうら ゆい);私立城北第一高校2年生。

三浦大輔・結の姉。

鈴木太一(すずきたいち);私立城北第一高校1年生。

負けず嫌い。未来の幼馴染。結のクラスメート。

四谷未来(よつや みく);私立城北女子第三高校1年生。

太一の家の隣に住んでいる。幼馴染。太一に恋心有り。夢見る乙女。

田端美耶(たばた みや);私立城北第一高校1年生。

いつも本を読んでいる。自分の伝えたい言葉を格言や台詞を使い話す。

佐伯 智(さえき とも);市立北浜中学校2年生。

佐伯恭也の弟。見た目は女の子だが完全な男の子。

結のことが大好き。

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