第三章;第十三話

文字数 1,941文字

 次の日 11日の土曜日だ。
 だいぶ体調が良くなって来た。
「ねえ、お姉ちゃん。お願いがあるの。明日の日曜日にバーベキューがあるの、行きたい」
「体調が良くなっていたら行ってもいいと思うんだけど、まだどうなるのか判らないかな。」
 ですよね・・・。
 体調がよくならないと行けれないよね。

「今日はゆっくりと寝て、治す事だね」
 そう言ってお姉ちゃんは僕の部屋から出て行った。

 本当に弱いな。僕の身体。
 男の子のときでも、女の子のときでも、突然に熱を出すのは変わらない。
 熱を出したら3日くらいは寝ている。
 昨日に熱を出したから今日は二日目、明日は三日目か・・・。
 バーベキュー行きたかったな・・・。

 それにしてもよく寝れる。
 お昼だよってお母さんがご飯を持って来てくれた。
 僕はお昼ご飯を食べた。
「どう?調子は?」
「昨日より良いかな。ご飯を食べれるし」
「なにか欲しいものある?」
「飲み物が欲しいかな」
 するとお母さんは必ず持ってくるんだ。
 僕が熱を出すといつも飲み物で持って来る。
 緑茶の冷えたもの。
 売っているものではダメなんだ。
 急須で入れたお茶に氷を入れて冷やすんだ。
 僕はこれが大好きだった。
 売っているお茶と味が違う。
 とっても美味しくて大好きなんだ。

 たしかこれを最初に飲んだのは、おばあちゃんの家に行ったときだ。
 おばあちゃんはいつもお野菜でも自分で作る。
 畑で出来たものを食べる。
 自分で作れないものは買うけど、自分で作るというのが好きな人だった。

 だから自販機で買うジュースやお茶は飲まない。
 僕はおばあちゃんの入れてくれるお茶が本当に好きだった。
 熱くて飲めないとき、おばあちゃんは氷を浮かべてくれた。
 小さいときからそのお茶を飲んでいるから、僕は緑茶が一番好きだ。
 そして急須で入れたお茶が大好きだ。
 お母さんもよく作ってくれた。
 おばあちゃんの味とは違うけど、お母さんの作ってくれるお茶も好きになった。
 熱が出ると500ccの水筒に緑茶と氷を入れてくれる。
 いつもと同じ味。お母さんの味。
 僕が気が休まる味だ。

「今日の夕ご飯は結ちゃんの大好きなものだからね」
「判った。麻婆豆腐でしょ。お母さんの味で一番好き」
「うん。知ってる。結ちゃん、しっかりと寝ているのよ。」
 お母さんの作ってくれる麻婆豆腐は本当に美味しい。
 どこに行っても、どこで食べても、お母さんの味以上のものは無いと思っている。
 すごく楽しみだな。恭也にも食べて欲しいな。
 僕じゃまだ作れないから絶対に食べて欲しいな。

 そして僕はまた深い眠りに入るのだった。

          ☆彡

 えっと・・・。何故起きると恭也が僕の横に居る?
「結さん。起きたんだね。」
 起きました。起きましたとも。
「恭也、僕の部屋で何してるの?」
「お母さんが買い物に行くから、結ちゃんを見ててって言われた」
「お姉ちゃんは?」
「なんか一緒に行きました」

 めっちゃ恥ずかしいんですけど。僕にまた熱を出せというのか?
「それでいつから恭也はここに居るの?」
「かれこれ一時間くらいかな」

 お母さん、お姉さんどこまで買い物に行ったのだ?
 若い男女を一つの部屋に押し込めておいて、そのまま出かけるって・・・。
 えっと・・・なにを話そう。

「結さん、本当にごめん。食欲が無かったり、
 暑さにバテたとか、体調が悪かったのに本当にごめん」
「何をしても僕は熱を出してたと思うよ。
 お母さんが居てもお姉さんが居ても熱は出てた。
 だから恭也が謝ることじゃないよ。
 熱が出るのは僕の体質みたいなものだし。」
 実際にそうだ。僕は何をしても熱は出る。

「恭也、僕は明日バーベキューに行きたいんだ。
 だから絶対に治したい。恭也も一緒に行くでしょ?
 僕は絶対に治す。だからよく寝て休めたい。
 恭也が居るとなんか寝にくいよ。恥ずかしいし。
 だからごめんね。しっかりと寝させて。」

「うん、わかった。明日一緒に行こうな。おやすみ、結さん」
 恭也は部屋を出て行こうとした。

「そうだ!恭也。今日の夕ご飯は麻婆豆腐だって。
 お母さんの麻婆豆腐は本当に美味しいの。
 作り方が面白いんだよ、和風なの。本当に美味しいから食べていってね」

「和風の麻婆豆腐ってどんなのだろ?すごく興味があるよ。夕ご飯一緒に食べような」

「おやすみなさい。恭也」
「おやすみ。結さん」

 僕はまたすぐに寝てしまった。
 本当によく寝てしまう。
 やっぱり疲れているのかな?

 おやすみ、お見舞いありがとう。恭也。

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登場人物紹介

三浦大輔(みうらだいすけ);県立城北第二高校1年生。

恭也の親友。現実派。母親と姉の事が嫌い。

三浦 結(みうら ゆう);私立城北第一高校1年生。

大輔の従妹ということになっている。

勝気で短気・頑固。涙脆い。正義感が強い。

佐伯恭也(さえききょうや);県立城北第二高校1年生。

大輔の親友・小学校4年生からの幼馴染。三浦結が大好き。

三浦翔子(みうらしょうこ);私立城北女子第三高校の教師。

三浦由依・大輔・結の母親。

三浦由依(みうら ゆい);私立城北第一高校2年生。

三浦大輔・結の姉。

鈴木太一(すずきたいち);私立城北第一高校1年生。

負けず嫌い。未来の幼馴染。結のクラスメート。

四谷未来(よつや みく);私立城北女子第三高校1年生。

太一の家の隣に住んでいる。幼馴染。太一に恋心有り。夢見る乙女。

田端美耶(たばた みや);私立城北第一高校1年生。

いつも本を読んでいる。自分の伝えたい言葉を格言や台詞を使い話す。

佐伯 智(さえき とも);市立北浜中学校2年生。

佐伯恭也の弟。見た目は女の子だが完全な男の子。

結のことが大好き。

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