第三章;第九話

文字数 3,420文字

 8月2日 全国大会初日。
 前日に僕はここ岐阜県に来ている。
 大会の会場はいつも同じ場所ではないと聞く。
 実際に僕はアーチェリーなんて高校に入ってから始めた。
 どういうものかなっていう簡単な気持ちで始めた。
 本当の事を言うと、お姉ちゃんの入っているバレーボールとかハンドボールに興味があった。

 姉妹揃って選手と言うのもかっこいいんじゃないって思った。
 部活見学をしてみてアーチェリーと居合に興味が出た。それで仮入部してみた。
 僕が入院していた時、お見舞いに来てくれた。
 この先輩たちとみんなと一緒にやって行きたいっておもった。
 そして本入部したのだった。

 学校は部活動には力を入れていない。
 だからすごい良い設備や器具とか揃っているのに市内大会ですぐに負けてしまう部活ばかりだ。
 お姉さん率いるバレーボール部とハンドボール部だけ、唯一県大会出場になったくらいだ。

 県大会というと県内の高校が集まり競う。
 しかし松浜市には約60もの高校がある。松浜市の60校もの高校が全部出場できるわけはない。
 そこで県大会に出場できる高校を市内の高校で競う。
 そこで勝った高校のみが県大会に行くことができる。
 60校もの高校が競うので優勝できることはとても難しい。
 そして県大会があり優勝できた高校が全国大会へと進む。

 県大会に出場したとき、レベルは格段に高かったが、私の初めての感想は『少ない』だった。
 全国大会も47都道府県と言われている通り、市内大会のように60校も出場してはいない。

 全国高体連アーチェリー専門部。
 全国大会の運営団体のように思う。
 思うと言うのは僕はあまりよく知らない。

 4月に第二高に入り、5月の終わりに中間テストをやり、
 6月最初に第一高校に編入学そして仮入部。
 入院して退院して、6月末に市内大会と県大会。
 7月に期末テスト。そして今は8月2日。
 今思うと本当に激動の四ヶ月だと思う・・・。

 まだ四ヶ月しか経っていない話だったのかというと、まだ四ヶ月しか経っていないのだ。

 僕が女の子になったのは中間テストが終わった後だから・・・。
 5月29日にテストが終わり、5月31日に最後に恭也と話して、
 6月1日の朝に女の子になったと思う。
 そして第一高校編入学が6月5日だったかな。
 あれおかしい。やっぱり違ってた。
 月曜日から高校に行ったから6月11日が初登校日。
 6月5日は僕がお姉さんに呼ばれて第一高校に初めて行って編入学試験をした日だ。

 6月1日に女の子になって、8月2日には全国大会ですか・・・。
 それで今、岐阜県の全国大会会場に立っているんですか。
 もう本当に無茶苦茶な人生を歩んでいますね。僕は。

 アニメでも漫画でも小説でも、作り物の設定で、
 こんな展開の話をつくろうとは思わないんじゃないですか?
 いくらなんでも急展開過ぎる。
 作り物の設定では、もうちょっと余裕を持たせないと、
 見ている人や読者には話が伝わらないと思うのですけど。
 でもまあこれは僕が実際に起きて体験していたことなので、
 話が急展開過ぎるのは仕方がないのかもしれないですね。

 全国大会の開会式。8月1日に行なわれた。
 先生から大会の日は8月2日から5日までって聞いていたのだが、
 7月の終わり、あの日は夏休み初日の前日だから7月20日の金曜日だと思う。
 顧問からいきなり家に電話がかかって来て、日程を間違えていましたって。
 1日に開会式があったんです。開会式は午後3時半からです!
 行ってみたら開会式は午後3時40分からだったと言うオチは横に置いておくとして、
 僕たちは顧問からのいきなりの電話に慌てた。
 7月31日、夏期講習が終わったらすぐに恭也が来て、
 顧問の先生と一緒に宿泊場所に向かっていた。
 無事に宿泊場所に着き、落ち着く間もなく夕食。
 顧問と打ち合わせを行なって寝た。
 そして開会式が午後にあった。

 恭也が前の大会で言っていたことだけど、華やかさが無い。
 全国大会特有の盛り上がり方が無い。
 アーチェリーですからそこはいいとしましょう。

 2日は予選ラウンド。
 女子予選団体戦 朝8時40分から予選を無事に終えて、
 3日より女子個人戦一回戦から決勝まで行なわれる。
 男子個人戦も行なわれているけど、市内大会で見事に破れている。
 4日は女子団体戦・男子団体戦が行なわれているけど
 気が付いていると思うのだが僕一人だけ出場だ。団体戦は出場しない。
 さてここまで4日までのスケジュールだ。そこで大会は終了する。
 5日まで全国大会だと言っていたような気がするのだが・・・、
 顧問の先生・・・しっかりして欲しい・・・。

 女子個人戦で私は優勝できた。
 この頼りない顧問だが、それでも優勝と言う文字には弱いと見えた。
 初めての大会で初めての優勝だ。
 出場した僕より緊張していたし、僕や恭也の宿泊場所を決めてくれたのだ。
 かなりの不満があるのだがそれはそれで良いとしようか。
 私の出場する女子個人戦決勝は3日だ。表彰も終わった。
 4日から5日までどうしろって言うのだろか?

「この際だから全国レベルを見ていきましょう。」
 4日になり全部の試合が終わる。
「今日はゆっくりと休みましょう。明日からは合宿が始まるんですから。」

 アーチェリー部顧問。実際には女子アーチェリー部顧問。
 男子アーチェリー部顧問は別に居る。
 そして男子と女子のアーチェリー部の合宿。
 長野県白樺・・・なんとかの民宿すずらんだったかな。
 僕は早くみんなと会いたいな。

 5日に長野県に行く。遠出に次ぐ遠出。
 直通の専用バスなんて無い。

 みんなは合宿場所まで学校で予約したバスでみんなで行ったと聞く。
 しかし僕は顧問の先生と恭也の三人のみだ。しかも遠出だ。
 タクシーで直行と言うわけも行かない。
 電車を使って駅に着いてからタクシーに乗り、全国大会会場の近くの宿泊場所まで行く。
 帰りも宿泊場所からタクシーで駅まで行き、合宿場所の近くと言う駅に行く。
 そこからは合宿場所のすずらんのマイクロバスが待っていて僕たちは合宿場所にいくのだ。

 全国大会個人優勝の報は学校にも連絡する。
 そしてこのアーチェリー部のみんなにも届いている。
 僕の来ることを今か今かと待っている。
 先生がすずらんに連絡して迎えに来てくれるように連絡する。
 僕はすぐには行きたくない。途中、コンビニに行きたいと顧問に言うのだ。
 もちろんこの願いは即却下されてしまう。
 迎えが来るとそれに乗り、僕はみんなの待つ民宿すずらんに向かうのだ。

 着くといきなりの歓迎をされる。
 第一高校始まっての全国大会優勝。
 みんなの喜ぶ顔はとてもすごいものだった。
 そこでお姉さんの名前を耳にする。

「さすがあの三浦由依の従妹だね。」
 太一くんも言っていたっけ、
『何故こんなにも三浦結が注目されるのか。そして何故こんなに期待をされるのか。
 俺は三浦由依先輩の従妹だから。ただそれだけでちやほやされるのだろうと思っていた。
 しかしそうじゃなかったんだな。常にしっかりと期待以上のことをしてきたんだな。』

 もしみんなの期待以上のことをしなかったら、僕はどうなっているんだろう。
 由依姉さんの名前に泥を塗ることになっていたのかな。

 でも僕は優勝できた。これでよかったんだよね。

 僕は恭也を見る。恭也も嬉しそうにしている。
 僕の付添人で恭也も合流することはみんなも知っている。
 僕は女子アーチェリー部と宿泊。
 恭也は男子アーチェリー部と宿泊だけど、行動は同じだ。

「はい。今日はそこまで。三浦結は今日遠出で疲れているんだから休ませなさい。」
 僕と恭也は隣に座って食事をした。

「結さん、これチョコレート。ゆっくりとするときには甘いのが一番良いですから。」
 いつの間に買って来たのだろう?恭也は袋を持っていた。
 その中に甘いチョコレート。疲れているときのチョコは格別にいいですよね。
「ありがとう恭也。本当に嬉しい。」
 僕がお礼を言うと恭也は嬉しく笑顔を見せた。

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登場人物紹介

三浦大輔(みうらだいすけ);県立城北第二高校1年生。

恭也の親友。現実派。母親と姉の事が嫌い。

三浦 結(みうら ゆう);私立城北第一高校1年生。

大輔の従妹ということになっている。

勝気で短気・頑固。涙脆い。正義感が強い。

佐伯恭也(さえききょうや);県立城北第二高校1年生。

大輔の親友・小学校4年生からの幼馴染。三浦結が大好き。

三浦翔子(みうらしょうこ);私立城北女子第三高校の教師。

三浦由依・大輔・結の母親。

三浦由依(みうら ゆい);私立城北第一高校2年生。

三浦大輔・結の姉。

鈴木太一(すずきたいち);私立城北第一高校1年生。

負けず嫌い。未来の幼馴染。結のクラスメート。

四谷未来(よつや みく);私立城北女子第三高校1年生。

太一の家の隣に住んでいる。幼馴染。太一に恋心有り。夢見る乙女。

田端美耶(たばた みや);私立城北第一高校1年生。

いつも本を読んでいる。自分の伝えたい言葉を格言や台詞を使い話す。

佐伯 智(さえき とも);市立北浜中学校2年生。

佐伯恭也の弟。見た目は女の子だが完全な男の子。

結のことが大好き。

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