インターミッション;休題;夏の怪談

文字数 2,785文字

 夏の夜、そして合宿。
 男子と女子が居る。

 怪談話、肝試し。
 夏の夜はイベントが沢山あるのだ。

 そして男の子と女の子と仲良くなれる。
 恐怖のドキドキしているときに近くに頼もしい男の子がいると安心する。

 つり橋効果で恋が芽生える。
 男の夢でもあるわけです。
 お付き合いしたい彼女とドキドキを体験、女の子としては怖い思いをして、
 そして近くには自分を守ってくれる男の子がいる。

 怖い話ってやっぱり怖いと思うけど、でも聞きたいと思う気持ちもあり、
 ホラー映画は怖くて手で顔を覆うけど、指の間で見てしまうという、あれと同じです。

 実際につり橋効果なんて本当にあるのかは不明ですが、
 あると言われていたり、無いと言われていたり、実際どういうものなんでしょうかね。

「これから肝試し大会を始めたいと思います!」
 アーチェリー部男子部員。
 だれかお目当ての女の子でも居るのか?

「これから森に入ります。ゴール地点まで男女ペアになって歩いていってもらいます。」
 くじ引きで男女を決めるということだけど、ちゃんと男女が同じ人数って言うのは偶然なのか?
 それにしてもよく顧問の先生が夜の外出を許可したと思う。
 あの顧問が、この顧問が許可をするって、どういう手を使ったんだ?

 ペアの決め方は男女それぞれ1から10まで書いた紙を引く。
 男子1番と女子1番、そして最後に男子10番と女子10番
 番号がそのまま歩く順番にもなっている。

 たしかにこれなら公平なくじ引きになってる。
 引く順番は男女それぞれ勝手に決めていいとのことだ。
 ズルが出来るようにはなっていない。
 すごいね。男ってこういうこともしっかりと考えるんだね。

 でもさ、本当にでもさ。
 10番で何で僕と恭也がペアになるのさ・・・。

「おまえら本当に仲が良いな・・・。」
 このくじなにかしただろ?
 そうじゃないとさ。こんなことって起きるわけないのさ。

 くじ引きで全員ペアが決まったところで外に出る。
 1番から暗い夜道を歩き出していった。
 1番が行ったらその10分後に2番目が行く。
 僕と恭也は10番だ。最初が行ってから100分後に行くことになるのか?
 1時間40分後か?
 待っているのもイヤだし、一番に行って僕たちが来るまで待っているのか?

 だれだこんな肝試しを考えたのは・・・。
 男子部員で盛り上がったんだろうな。

 僕たちの順番が来た。
「結さん、それでは行きましょうか」

 実際、暗い夜道というものはそんなに怖くない。
 はっきり言ってしまわなくても僕は元男の子なわけだし、
 女の子によくあるような「きゃ~」なんてことはならない。

 でも森の中は普通の夜道とは違っている。
 僕の家は夜になると車はほとんど通らない。
 田舎だし都会のような騒がしいところではない。
 田舎といっても全道路は舗装されている。
 この森の道のように土で出来ているところは無い。
 そして木々に覆われていて先がよく判らない。
 だからだろうなやっぱり不安ではある。

「恭也、ちょっと待って。」
 なにか前の方で動いた。
 風?ちがう。わたしたちの周りに誰かが居る。

 恭也が僕の前で身構えた。
「恭也、何か見える?」
「いえ、見えませんけどなにか居るように思います」
 僕は落ちている石を拾った。
「恭也は前方に注意して、私は後ろを注意するから」
「判りました。結さん進みますよ」

 足音がしない。
 でも僕たちにぴったりと付いてくる。
 動物かと思ったけど、動くと一緒に付いてくる。
 止まると一緒に止まるのだ。
「恭也、気をつけて進んで。なにか居る」

 そこだ!僕は気配のした場所に石を投げ込んだ。
 そしてすぐに気配した場所へと走り出した。

「結さん!」
 恭也が大声を出して僕を呼び止めようとした。

 その恭也の声に他の部員たちが集まってきた。
「恭也くん、結ちゃんになにかあったの?」
 心配した部員たちが恭也に言うのだった。
 草むらの奥から僕は出てきた。

「結ちゃん、何があったの?」
「気配がしたから石を投げ込んで追いかけていったんだよ」

 部員は全員ここにいる。
 だから誰も森の中には居ないはずだった。
「でも絶対になにかが居たんだ。気配を感じた。
 動物じゃない。動いたら一緒に動いたし、止まったら僕たちと一緒に止まるんだ」
 恭也も同じように感じたと話してくれた。

「やべ。マジで?ここって先輩から聞いてるんだよ。マジで出るよって」
「結ちゃんもうやめよ。本当に怖いよ」

 僕はまた草むらから気配を感じた。
「恭也」
「結さん、判ってます」
 僕は石を拾い上げた。

 恭也と僕は同じ場所を見ている。
「石を投げ込むからすぐに入って。
 僕は逃げられないように奥から行く」
「結さん、了解しました」

「お前ら、どうした?」
「結ちゃん、なにかいるの?」

 僕は気配した場所に石を投げ込む。
 僕と恭也はすぐに草むらに入っていった。
 僕は恭也を見る。
 恭也は頭を振った。

「えっとさ、マジでなにか居た?」
 居なかったら石なんて投げるかよ。
「さて帰りますか。」
 僕と恭也は来た道をひきかえそうとした。

「恭也くん、結ちゃん。帰りはここを通らずに別の道で帰ろうか」
 他の部員たちも激しく同意した。
 下に舗装された道が通っていた。
「こんなに良い道があったら最初からここを通ればいいのに」僕は嘆いた。
「結さん、この道だったら肝試しにならないんじゃないですか」
「そっか、肝試しやっていたんだっけ。」
 僕と恭也との会話に肝試しをしていたという緊張感が無い。

 でも僕は気がついていた。
 森の横を通るこの道が一番強いなにかがある。
「結さん、僕の横に居てください。気がついていますよね」
 恭也もこの道になにかを感じ取っている様子だった。
「恭也、さっきよりも嫌ななにかを感じる。」
「気が付いていない振りをしていてください。お願いします」
「了解。」

 僕はオカルトは信じていない。
 なにか気配を感じることはある。
 そこには何も見えない。
 しかし、なにかがそこに居るのだ。

 目に見えないなにか。
 目に見えているものだけが現実ではない。
 見えていないものも存在することがある。

『触らぬ神に祟り無し』

 昔からそういうことが言われているのだ。
 気が付いていても気が付かない振りをする。
 これが一番良い方法のときもあるのだ。

 僕と恭也は肝試しというものは不向きだと思う。
 だって僕と恭也を見て、本当に怖がってしまっている部員たちがそこに居るのだった。


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登場人物紹介

三浦大輔(みうらだいすけ);県立城北第二高校1年生。

恭也の親友。現実派。母親と姉の事が嫌い。

三浦 結(みうら ゆう);私立城北第一高校1年生。

大輔の従妹ということになっている。

勝気で短気・頑固。涙脆い。正義感が強い。

佐伯恭也(さえききょうや);県立城北第二高校1年生。

大輔の親友・小学校4年生からの幼馴染。三浦結が大好き。

三浦翔子(みうらしょうこ);私立城北女子第三高校の教師。

三浦由依・大輔・結の母親。

三浦由依(みうら ゆい);私立城北第一高校2年生。

三浦大輔・結の姉。

鈴木太一(すずきたいち);私立城北第一高校1年生。

負けず嫌い。未来の幼馴染。結のクラスメート。

四谷未来(よつや みく);私立城北女子第三高校1年生。

太一の家の隣に住んでいる。幼馴染。太一に恋心有り。夢見る乙女。

田端美耶(たばた みや);私立城北第一高校1年生。

いつも本を読んでいる。自分の伝えたい言葉を格言や台詞を使い話す。

佐伯 智(さえき とも);市立北浜中学校2年生。

佐伯恭也の弟。見た目は女の子だが完全な男の子。

結のことが大好き。

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