第三章;第十四話

文字数 2,413文字

「結ちゃん。体調はどう?」
「うん大丈夫。」

 昨日の夜は恭也も一緒に夕ご飯を食べた。
 僕の大好きな麻婆豆腐。
 お母さんの味で一番好きな食べ物。

 恭也はお母さんの麻婆豆腐を食べて言う。
「結さんの言う通り、和風の麻婆豆腐だ」

 恭也はとっても喜んでくれた。
 恭也の喜んでいる顔を見ると僕も嬉しい。

 お母さんから作り方を教えてくれるというが、
 お母さんの味は僕にはまだ無理だ。
 でもお母さんから沢山料理を教えてもらおう。

 お母さんの料理は本当に美味しいんだから、
 だから僕もお母さんを手伝ったりして色々と教えてもらおう。

 そしたら恭也、ちゃんと味見をお願いします。

          ☆彡

 そして、朝を迎えて今日はバーベキューの日

 クラスメートのジェームスくんからのお誘いだ。
 僕は未来ちゃんに電話をする。
 未来ちゃんは太一くんと一緒に行くって言っていた。
 僕はお姉ちゃんと恭也と一緒に行く。

「結さん、由依さんおはようございます」
「恭也、おはよう!」

 そして三人で歩き出す。
 場所は天龍川河川敷。

 歩いていくには遠い距離。
 でも歩いていけない距離ではない。

「結さん、治ったばかりなのに良いんですか?」
 恭也も僕の事を心配してくれている。
「大丈夫。せっかく合宿で体力作りしたのに、2日も寝てまた体力が落ちちゃった。
 だから取り戻さないといけないの」

「恭也くんいいの。結ちゃんは言ったら聞かない子だから」
「お姉ちゃん。私が頑固で融通の聞かない子って聞こえる」
「頑固って言うのは本当じゃん。ちゃんと自覚してよね」

「お母さんやお姉ちゃんの言うことはちゃんと聞くもん」
「恭也くんの言うこともちゃんと聞いてくれたら嬉しいのにな」

「だってさ、それはさ・・・」
 恭也の言うことも聞く。それはちょっとな・・・。
「恭也くんをしっかりつかんでおかないと、結ちゃんはお嫁さんにいけなくなっちゃぞ」
 お姉さんが僕の耳元でささやいた。
 僕が恭也のお嫁さん?!
「お姉ちゃん。やっぱり僕には難しいよ」
「結ちゃんの意識の問題でしょ。結ちゃんは女の子でしょ」
 女の子です。男の子だった女の子です。

 話しながら歩いていると、いつの間にか着いている。
「なにこれ?なんかすごくない?」
 ビーチチェアーや椅子やテーブルが沢山置いてある。
 すでに大勢の人たちが集まっている。

「結ちゃん、本当にここでいいの?」
「いいんじゃない?ジェームスくんがいるもん」

 バーベキューの焼くものが大きいもので二台も置かれている。
 ジェームスくんのお父さんとお兄さんが、炭火でお肉や野菜を焼いている。

 僕たちはジェームスくんの家族に挨拶をした。
「今日は御招待ありがとうございます」
「学校の友達だね。楽しんでね」

 ジェームスくんはバスケット部員の友達と話している。
 お父さんの友人たちも集まって話をしている。
「お姉ちゃん、タガログ語?」
「ビザヤの言葉が混じってるみたい」
 ビザヤって言われてもよく判らない。

「結さん、こっちです」
 未来ちゃんが僕たちを手招きしてくれている。
 太一くんと、メガネの女の子が居る。そして未来ちゃん。
 私とお姉さんと恭也。なんか変な組み合わせ。
 そして未来ちゃんがメガネの女の子と話している。
 恭也も太一くんと話をしだした。

「結ちゃん、体調はどう?」
「うん、大丈夫だよ」
 今日は本当に調子が良い。
「お姉ちゃん、お肉すっごい柔らかいよ。火がちゃんと通ってる」
「本当に美味しいね。炭火って良いね」

 恭也を見ると飲み物を一気に飲み干している。
 そんなにのどが渇いていたのかな?

「恭也、ジュースが良い?それともお茶にする?」
「結さん、それではお茶をください」
 恭也に言われて僕は恭也のコップにお茶を注いだ。

「私もお茶を飲もう。お姉ちゃん、お茶は飲む?」
「私はまだいいよ。ありがとう」
 僕は自分のコップにお茶を注いだ。

 なんか太一くんの視線を感じる・・・。
 恭也となにを話しているんだろ・・・。
 あとで恭也にきいてみようかな。

「結ちゃん、まだ恭也君の事好きになれない?」
 お姉さんは僕に聞いてきた。
「恭也の事は好きだよ。嫌いだって一回も言って無いと思う」
 僕にはどうすることもできない問題。
「男の子だった女の子と男の子との友情」
 そして恋愛として成り立つのか。

 どうなるんだろうね。本当にわかんない。
 でも僕は恭也が好き。
 恭也も僕の事が好き。
 この恋が実るのか、実らないのかって、今本当に考えるときなのかな。

 僕と恭也はまだ高校一年生だし、もちろん恋愛することはできるよ。
 お付き合いすることもいいと思う。
 でも僕はまだお付き合いとか、今は考えたくないかな。
 恭也の事は友人として、今はそれで良いと思う。
 無理に恋愛にする気持ちが僕には無い。

 恭也はいつまででも待ってくれるというけど、いつまででも待たせる気も無いよ。
 本当にちょっとの間、恭也待っていてね。
 わがままな僕の都合を押し付けているだけのように思う。
 それは僕も感じている。
 恭也に他に良い人が出来たらそれで良い。

 僕には自分のことがよく判って無いし、この身体の事もやっぱりわからないんだ。

 もしかしたら明日になったら男に戻っているかもしれない。
 恭也の前に、大輔が帰ってくるかもしれない。
 もしかしたらもう二度と大輔は現れないかもしれない。
 一生これから三浦結として生きて行くかもしれない。
 僕にもわからないんだよ。

 大輔として大親友と言ってくれてありがとう。
 結として僕を愛してくれて本当にありがとう。

 僕も大好きだよ、恭也。

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登場人物紹介

三浦大輔(みうらだいすけ);県立城北第二高校1年生。

恭也の親友。現実派。母親と姉の事が嫌い。

三浦 結(みうら ゆう);私立城北第一高校1年生。

大輔の従妹ということになっている。

勝気で短気・頑固。涙脆い。正義感が強い。

佐伯恭也(さえききょうや);県立城北第二高校1年生。

大輔の親友・小学校4年生からの幼馴染。三浦結が大好き。

三浦翔子(みうらしょうこ);私立城北女子第三高校の教師。

三浦由依・大輔・結の母親。

三浦由依(みうら ゆい);私立城北第一高校2年生。

三浦大輔・結の姉。

鈴木太一(すずきたいち);私立城北第一高校1年生。

負けず嫌い。未来の幼馴染。結のクラスメート。

四谷未来(よつや みく);私立城北女子第三高校1年生。

太一の家の隣に住んでいる。幼馴染。太一に恋心有り。夢見る乙女。

田端美耶(たばた みや);私立城北第一高校1年生。

いつも本を読んでいる。自分の伝えたい言葉を格言や台詞を使い話す。

佐伯 智(さえき とも);市立北浜中学校2年生。

佐伯恭也の弟。見た目は女の子だが完全な男の子。

結のことが大好き。

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