シン・鉄研でいず!

文字数 3,305文字

という訳で、人生の終わりを迎える旅を著者はしていた。
それがこのアニメフェア……東京ビッグサイトの。
いつもの待機列。いつもの朝。そして人生が終わる。
はずだったのだが!
なんですかこれは!
よ、ヨネタニア?! ヒドイっ!
これは……著者作家業20周年記念誌……そうか、そういうことだったのかリリン!
そういえば雑誌オルタニアで著者さん苦しい思いもしてましたわね。その真相がまさかこれ、だなんて。
サプライズで喜ばせてくれようとしてたのね。素敵な仲間たちだわ。
だが、ワタクシは著者がこの時、喜びながら、ある感情に襲われたのも知っておる。そもそもワタクシは人を喜ばせるためであってもサプライズというのはよろしくないと思っておる。そもそも隠し事というものはそれ自身でよろしくないのだ。
でも素敵じゃないですか。そうは思いませんこと?
著者がここまでどれだけ苦しんできたかを思うと、著者は喜んでいたのは事実。心から喜んでいたのも事実。でも、なのだ。
それは贅沢というものだよー。
さふであるな。喜ばざるを得ないのだ。でも、この時、著者は独特の感情を感じておった。
著者さん、めんどくさい人だなー。ヒドイッ。
そもそも小説書く人でめんどくさくない人などいるとは思えないのですが……でも、いろいろありましたものね。
なぜこのサプライズで発刊された本に著者の作品が載っているか、それもまたその感情とつながっておるのだ。だが、あえてその詳細には触れぬこととしよう。せっかくこうして喜ばせてくれた皆さんに申し訳ないからのう。
でもこれに合わせて「鉄研でいず!」のテーマソング作ってくれたり、ほんといろんなことしてくれる仲間、素敵ですよ。ヒドイッ。
ツバメちゃん、それはひどくないから……。でも、これで著者さん、生きる気力を取り戻したんですか?
御波くん、君も察しておるであろう。これでよかったよかった、とはならなかったのだ。
もー。めんどくさいなあ。ヒドイッ。
でも、分かる気がする。


そもそも、サプライズなんかしなくても、普通に一緒にいてくれるだけで既に十分嬉しいのに、なんで隠してまで、って思っちゃったんだと思う。

御波ちゃんもめんどくさいなー。でもそうだったのかしら。ヒドイッ。
冗談を間に受けたり担がれやすい、チョロい著者であるからのう。しかたのねいことではある。でも、これで著者は、とりあえず4月の決行を保留することとした。
結果的に命を本当に救われたんですね。著者さん、運が強いなあ。
たしかに我が著者は運が強い。だが、それが幸せと感じられないのがまた厄介なところである。そしてそれに連動する非実在女子高校生のワタクシも大変メーワクを受けたのである!
そうですね。鉄道模型コンベンション出展もピンチなのは相変わらずだし。
それ故その悩みをエブリスタに投稿してみたものの、散々である! あそこはカクヨムと同じでPV とUUの区別も付いておらぬ。そして書き手が何に喜ぶかも理解しておらぬ。ごくわずかなUUが書く糧になるとでも思うたか痴れ者!エブリスタもカクヨムもその点では書き手の気持ちなどどうでもいいところである。スパルタにすればいい書き手が育つという勘違いをしておる。あれでは嫉妬に狂うワナビーを量産するだけであろう!それでも潰れもしないし批判もされない。要するにあそこもまた新自由主義に毒された搾取の世界である!
そうですわ。そのうえあの後とある仮想通貨がらみの投稿サイトはもっとひどいものでしたわ。挿絵や表紙がつくとそれが作れない人と差がついてしまう、と。運営がそれを否定しなかったところにまさに正気を疑いましたわ。
挿絵や表紙に工夫したりするのも楽しみだしそれをやるのも努力の一つだもんー。それがバッサリ否定されて結果平等みたいになるなんて、悪平等だよー。
華子は本当にえらいのう。競争は全てではないが、工夫の余地のないところ、自由のないところで何をすれば良いというのだ?呆れて話にならないのである!
ええと。また話が進まなくなりましたね。ともかく、そうやっていろんな投稿サイトを試した結果、どれも惨敗でしかもこのトークメーカーでのpvも失った、というわけですね。
元も子もないとはまさにこのことである!!
力強く言ってもダメです! ヒドイッ!!
そして!! 我が鉄研の北急電鉄チャンネルも、再収益化の条件で満たせていなかったチャンネル登録者数1000人をクリアした!
ほんとだー! これで収益が!
しかし、なんとこの再収益化、2ヶ月もYouTube側の一方的な都合で遅れたのである。収益化ができたのは6月!当然出展の軍資金には間に合わない!
ひいいい! なんでそんな遅れるんですか!
ずっと後から申請したバーチャルユーチューバーはすぐに収益化の審査が通っておる。つまり、申請順にやってもらえるなどというのは甘いのだ。YouTubeが金になりそうだと思わなければいくらでも先送りなのである。それが新自由主義、資本主義というものである。選ぶ権利はYouTubeにあるだけで、クリエイターはただの搾取されるだけの「小作人」なのだ。それは他の投稿サイトや電子書籍書店、特にKindleストアなどでも同じことなのだぞ。
なんだか時代がすっかり江戸時代以前の身分制みたいになっちゃってるよねー。ヒドイよねー。格差ってこういうことだよねー。
華子の言う通りなのだ。この現代ではそういうとんでもない搾取が当たり前に行われ、そのうえそれに抗議してもそれに対応するのはまた搾取されている弱者、窓口対応を任されたクラウドワーカーなのだ。どんなに抗議しようとも弱者同士の争いにしかならぬし、抗議の声は決してその奥の中枢には届かぬ。彼らは弱者を盾にして個別に回答はしません、で終わりなのだ。
そうなると、その中心にいる人たちはもはやAIであっても同じですわね。
おそらくAmazonにしろGoogleにしろ、ああいう企業はかなりの自動化が進んでおるだろう。企業自身が情報という資本で運転される金のなる木という装置なのだ。そしてそこで働く窓口や配送の人々は人間扱いなどされておらぬ。そして彼らのサービスを受けるものもまた人間としては扱われてはおらぬ。

映画「マトリックス」でコンピュータの動作のための熱源としてだけ生かされているという未来の人類の姿が描かれているが、現在既にもうその状態なのだ。

我々はその金を生むシステムのために生きて結婚して子供を産んで死ぬようにされてしもうた。あとはそれとの付き合いを割り切って金のためだけと思って趣味に生きるしかない。だが、この日本ではそれすらも奪われようとしておる。

ま、まさにディストピア……ヒドイッ!
ほんと、ひどいよね……これで正気を保つのは無理よ。
でも、華子はそれでも楽しいことがある、って言えるのかな?
ボクはたのしいよー。だってこうしてみんなと一緒に居られるし、模型やったり撮り鉄したりYouTube動画作ったりできるもんー。
うむ、華子はそういうところを先駆的理解しておるようであるの。さすがなり。


にもかかわらず、我らは生きねばならぬ。苛烈な収奪のあった時代でも、我々の祖先は生き抜いてきたのだ。生き残らなければどうにもならぬ。


逆に言えば、生き残ってしまえば、斯様なものなどどうなっても、どうとでもなるのだ。

生き残る……。あまりにも辛いですけどね。
それに著者さん、生き残っても離婚してるしお金もないし、子供もいませんよ。
でも、にもかかわらずそれは死ぬに値する条件は満たさないのだ。悔しくて悲しいことだが、どうしようもなく生きて作ってしまうようになってしまったのが著者であるし、その著者とともにあるわれら鉄研もそれは同じであるのだ。
では、我々もこのまま乙女のたしなみ「テツ道」の成就のために、鉄道模型コンベンション出展を目指すんですね。
さふなり。いよいよ今年のテツ道の来た道が次回エピソードより明らかになるぞよ。
さすがカオルちゃん、軌道修正成功っ!
でも、今年2018年はどんなの展示するんですか?
それは!
みんな息を飲んだ。
次回に続く!のである!
みんなまたずっこけたのであった。
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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。

葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。


武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。


芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。


中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。

田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

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