第33話 こじらせた果てに

文字数 2,407文字

総裁、何レールを切ってるんですか。
うむ。実はまた突発性金欠病で模型工作ができずにストレスが溜まっておったのだ。


そこですでにある材料だけでできる工作をしようと思うのだな。

そうなのかー。でも著者さんにバイトさせてたのになんで金欠になったのー?
サンライズ出雲旅行行ったからかな。
さふであるのだ。少しお金の計算を間違えて支払いがやばい。
やっぱりそうだったんですね。まったくもー。
でもあの旅行の取材結果で私たちもサンライズ出雲旅行できるんですよね!!
うぐ、それが……あれで旅行するのは流山鉄研の諸君らしいぞ。
えーっ、私たち、お留守番?
そうかも知れぬ。
えー! やだ! サンライズ出雲旅行私たちも行きたい!
現在定期運行されている唯一の定期夜行列車ですものね。今のうちに乗っておきたいですわね。
でも最近カクヨムで進んでる流山鉄研の話の方に力入っててヒドイっ。私たちほったらかし?
うむ、それが……。
あ。向こうの話、今ミエさんの話になってて大変なんだよねー。あれどーすんのー?ミエさんと喧嘩別れしたこと、洗いざらい話しちゃうのー?
うっ、華子くんいきなり核心を突くことを。
ミエさんとあんな仲良かったのに、って読者の皆さんも思ってますよ。どうするんですか。
うぐ、それが……。
まさか先がどうなるかわかんないのに書き込んじゃったってこと?
うっ、それは。
書き込んだんだよね。
違う。そこはワタクシも……。
書き込んだんだよね。
いろいろとワタクシには、
書き込んじゃったんだよね。
はい、先が読めないのにイキオイで著者に書かせてしまいました!


うっ、うっ、ワタクシもあの件はまだ現在進行形で辛いのでなんとかならぬかとジタバタしておるのだ……。

あーあ、総裁泣かせちゃった。
御波ちゃん、超ドSでヒドイっ。
やだ! 私だってあの件、辛いに決まってるじゃない。
別れるなんて全く想定する関係ではなかったのですからね。でも別れてしまった。
総裁、もうちょっと計画的にやるかなとおもってたのにー。なんであんなことしたの?
うぐぐ、ワタクシもまさかここまで一気にこうなるとは思うておらなかったのだ。まさにワタクシの暗愚たるところなり。
そうなのか……。
これより先の話は流山の諸君とやるので、今しばらく猶予をいただきたいのだ。
そうするしかないですね。まったくもー。
いろいろとワタクシも昨年9月に決裂して以来、ずっと考え続けていた。それでも答えが出ぬゆえ、こうして工作に逃げておったのだ。
切ったレールの裏にプラ板で裏打ちをする。
KATO高架橋は非常に良くできてあるのでそれを使う。これに蓋をするのだ。
なんでー?
後でわかるぞ。
蓋の上に裏打ちしたレールを配置して接着。
そして部材を取り付けて組み立てていく。
サーフェイサーを吹いて落ち着かせる。
そしてバラストをまいてKATOのバラスト糊で固定していく。
そっかー、あそこで蓋しないとバラストがまけないんだねー。
さふである。華子はえらいのう。
ほめらりたー!
こうなった。
おおー、こういう線路ありますよね。小田急多摩川橋梁とかこうなってますよね。
さふであるのだ。あれが作りたかった。
でもこれ、隣の線路との接続部が接着ですわね……力がかかるのでここが脆くなりがちですわ。
ここはしっかりとネジ止めしたい所だがネジを植えるスペースもないのだこれには。
難しいですわねえ。でもわたくしにもどうして良いかわからないのです。
あとカットラインがどうしても揺れてますね。
そうなのだ。カッターをうまく固定することがすごく難しかったのだ。
かといってカット後に揃えるのも割と難しいですねこれ。
レールもスラブ軌道になったらプラも、ふにゃふにゃで下手に固定すると良くない癖がついて後でまた困りそうであるのだ。
難しいですね……これじゃいけないと思うのにどうしていいかわからない。
そもそも現実世界でこういう模型を作ることは、このような不条理に悩むことでもあるのだ。
工作の手順に答えが用意されてませんもんね。模型。作りたいものはある。でもそれを作る絶対の正解は簡単には出ない。
かといって、作りたいものは現実にあるわけで、それを模型化できないのは悔しいです。ヒドイっ。
うむ。そういう悔しさを学ぶこともまた、模型作りと、ワタクシの「少女の嗜み・テツ道」の大事なものかも知れぬ。
ミエさんのことでその「テツ道」の旗、下ろしたいって総裁、一時期すごく辛そうでした。
えっ、下ろしちゃうんですか?ヒドイっ。
下ろしはせぬ。辛いことだが、これもまたワタクシが学ばねばならぬ「テツ道」なのかも知れぬ。学ばないでミエくんと一緒にいられればそれでよかったのかもと思うが、もうそれがない故、こうするしかない。
でも、テツ道をやって、何を得るんですか?
そもそも何かを得るためのテツ道、と言うのが間違いなのだ。
それ、この前総裁が見てた永平寺の禅の動画であったやつですね。またすぐ影響されるんだから。ヒドイっ。
うっ、そうかも知れぬ。
でも総裁は、テツ道を極めた先になにかの悟りを開こうとなさってるのでしょうか。
そんなことは暗愚なワタクシにはできぬと思うが、ワタクシには理解したいことがあるのだ。ワタクシがなぜこうしているのか、とか。
業に近くなった鉄道趣味をどうにかしようとしている、と言うことでしょうか。
そうなのかもしれぬ。最近、テツ道とはワタクシが思う以上に難しく奥深いものなのではと思うようになったのだ。
ただ電車が好き、なだけなのに、ほんとこじらせまくってますね。
こじらせなければ架空周遊列車「あまつかぜ」もないし、我が著者の小説もなかったのだ。


そして辛いいくつもの別れもなかった。

そうですわねえ。
ワタクシはもう先に大きな望みは持てぬ。しかしこの命を捨てることもできぬ。ゆえ、残されたわずかな命をどう使うべきか。ワタクシはまずそれを考えなくてはならぬ。それもまたテツ道であるのだ。
そんな、短い、なんて。
つづきます。
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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。

葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。


武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。


芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。


中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。

田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

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