奮闘! 屋根上の魔術師

文字数 2,436文字

そのころミエさんは? まさか停滞したままとか?
さにあらず! ミエ君はミエ君で、奮闘しておったのだ。
そうですー! 途方に暮れてたのは正直なとこだけど、それはそれでなんとかしようとあがいてましたー!
あのBトレベースがどでかくデーンと半分占めちゃうモジュールだもんね。それをどう説得力つけるかは難しそう。

しかもその片方は高架駅セットの建物だけど、あれにはマトモな屋根がない。そこをどうするかも大きな課題だね。

さすがカオルさん、明晰だなー。そうですー。そこで私も途方に暮れましたー。なにか作らないと見た目が悪すぎますー。そこで、空調機を作ることを考えましたー。
なるほど、空調機は実物を高層建築などで上から見たら、すごくよく目立ちますね。メカニカルな造作とかも面白いし、模型としての情報量もあって作れば効果的かも。
そのアイディアは、以前ミエ君とスカイツリーに登ったことがあってのう。上から街並みを見ていて、あれはどう作ろう、これはどうディフォルメしようと考えておって、そのなかで空調機の表現は効果的であると思ったことも、生きておるのだ。
あれは私のオリエントパシフィックをいっしょに模型友のレイアウトで撮影に行くときに寄ったんですよー。途中時間が余ったので、スカイツリー登ろう、って。
せっかくスカイツリー登ったのに風景黙って見てないで模型制作のロケハンにしちゃったんですね。ヒドいッ!
このときスカイツリーに上りながら、実は一杯風景の資料写真を撮ったのに、なんとワタクシはスカイツリーそのものの写真を撮り忘れたのだ……。
でもそういう機会でも模型の参考になるものを考えるというのは、模型ファンとしては素敵ですわ。ただ漠然と風景をみるよりも楽しかったのではないかと拝察します。
そうですー! 私だけだったら「高いー」「すごいー」「都心が見えるー」位だったかも知れません。それが一緒に登った総裁が「この風景、どうやったら再現できるであろうか」って言いだして。
まぁた総裁のビョーキがでちゃったんですね。ヒドいッ。でもそういう模型への情熱はさすが総裁と言えるとこだと思うけど。ヒドいッ。
うむ、しかしあのときの風景は非常に勉強になった。レイアウトにおいてすでに何度も言っている「高低差は正義」と同じような「平行線は敵だ!」といった観察もあったし、「屋根上を制するものはNゲージレイアウトを制す!」もまた教訓に加わったのだ。
なるほどー。って、まだ具体的にはよくわかんないけど、でもそれも作品でいずれ表現されるんですね。熱心だなー。
でも、考えてみたら、私のあのプランに説得力を持たせるためには空調機の表現は絶対に必要なんです。だってBトレベースの真下は大空間の車両ミュージアムですから。
あのプランではその大空間の車両ミュージアムの両側は大きな窓……日の差し方によっては室温が上がり、空調容量が心配になる。ここまで考えるのもまた楽しいのだが。そこで造作の良い空調機を作ることで屋根上をディテールで引き締めるとともに説得力アップを図る作戦をミエ君は考えたのである!
でも空調機なんて、マトモに作ったらメチャメチャ手間かかるー。印刷表現にしたら手抜き感がバレるー。
華子はえらいのう。さふなり。そこで工数を考えつつ、部品流用などで適切な表現が必要なのだ。
そこでこうしたんですー。
コトブキヤのロボット系模型用コンテナ、買ってて使い道なかったのでそれを空調機ボディにしました。ガンダムパーツのラジエターを貼り付け、ファンはトミックスのEF58の動力輪とこれまたガンダムパーツのバーニアノズルを使いました。なんとかコレで空調機に見えないかなー、と思って。
全部他の目的用のパーツの流用でここまで作っちゃったんですね。でもこれ、塗装すればバッチリ空調機に見えますね。しかも結構ボリューミーなのでこれが3コ並べばなかなかの迫力になりそう!
こういう部品転用の妙がミエ君の得意とするところなり。そしてこういう工作にこそ、その高い基礎工作力が存分に活かされたと言えよう。
そう言いながら工作途中の写真撮影にちょっと工夫してるのが面白いです。ただの工作机での撮影にしないところが素敵です。ヒドいッ。
もー。ツバメちゃんひどいよー。なんでも語尾「ヒドい」なのはナニだよー。
それで塗装したらこんな感じですー。
すばらしいですわ。塗装の空調機らしい色合いがまた素敵。そこにディテールに墨入れもしてあって、手を抜かない基礎工作が光ってますわ。

でも、この角になにかマークがありますわね。これはなんでしょう?

さすが詩音さん気付いてくれましたね! これは、「エアコンはダイキンエアコン」と別の模型友に乗せられて、私、こんなもの作ってみたんですー!
だ、ダイコンエアコン!! もじったんですね! でもすごく本物っぽい! というか、これ、デカール自作ですよね。こんな所にここまで凝るなんてすごい! ヒドいッ!
ツバメちゃん、これはヒドいというよりすごいだから……。でもほんと、手間惜しまないなあ。ミエさんらしいなあ。


でも、このとき、時間的にすでにヤバかったんですよね。

結果、こうなったわけですね。いい存在感だなあ…。Bトレベースはあいかわらずデーンと存在してるけど、その脇がしっかり固められてるのは効果的ですね。
さふなり。屋根上はコレで解決するにせよ、そもそもこの空調機、どうやってメンテするのかとか、メンテ通路をどうやるとか、そういう優先順位の低いことをこの期に及んでもワタクシも考えておったのだが、真の恐ろしい相手はこのとき、別にあったのだ!
恐ろしい相手? なんでしょう?
うむ。我々Nゲージ鉄道模型ファンにとってはおなじみのアレが、牙を剥いたのだ。ワタクシもかつてその手強さに泣いたのだが、今度はミエ君も泣くことになったのだ……。
ひいい。でも想像も付かない! ヒドいッ!
その真の「恐ろしい相手」との苦闘の話は、次に続くのである!!
というわけでまた続きますー。
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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。

葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。


武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。


芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。


中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。

田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

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