最終話 約束の朝

文字数 1,814文字

そして、朝が来たのだ。


ベッドサイドのケータイが震えた。


ミエ君から、始発の新幹線のぞみ1号で先に帰っているとの連絡であった。

だって総裁、力尽きてドップリ眠ってましたから。起こしちゃ悪いなと思って。
でもミエ君が無事新幹線に乗れたと知り、ワタクシはホッとしたのである。


そして、着替えなどの荷物を発送し、ワタクシも帰途についたのである。

家に着くまでが出展ですものね。
ああ。なんとしても帰らねばならなくなった。

たくさんの笑顔を期待して出展した。

たくさんの笑顔を貰って、それをお土産に出来た。

これで帰宅出来なかったら、最後の真の約束が果たせぬ。

真の約束って……そういうことだったんですね。
さふなり。こうして一年を賭けた、約束の出展が終わり、また約束したのだ。

またくるよ、と。

それにしても、ムチャが過ぎますよ……。ヒドいッ。
そして、宿を後にしたのである。
ほんと、この宿にはお世話になりましたね。
ああ。

やはり次はもうちょっとマトモな出展にせねばならぬ。

著者をして体力作りをせしむ必要があるだろうな。

こんな状態だったのに、それでもなお、出展をヤメる、って選択はないんですのね。
やはり、あの場に立って、出展する栄誉を得てしまったら、もう忘れることは出来ぬからの。1年の鍛錬の成果の発表なのだから。
あの場は、最高の舞台なのです。私たちにとって。
そして、帰宅して、旅先から発送した荷物が届く前に、レポ動画を作成したのであるな。
ほんと、なんといったらいいやら。ヒドいッ。
私の方はまだ出来てません……。
よいよい。いずれいつの日か作るときもくるであろう。


そして、荷物が次々と到着し、その荷解をしながら、この苛烈で楽しかった旅の記憶が走馬灯になるのであるな。

あ、忘れ物は届いたんですか!
無事届いた。タクシー会社さんにはメーワクをかけてしもうた。

ほかにもいろんな方にいろいろと体調不良などでも心配をかけてしもうた。

すまないのである。

ラッキーさん1/150も見つかりました。カバンの底にありました。お騒がせしました……。
もー。ほんとそうだようー。
しかし、そういうこともあったけれど、
私たちは一回り、また大きくなれたような気がします。

いろいろ反省もしたけれど、それゆえにもっと良くしようと思えます。

そして、我々の、2017年の、夏が終わった。

そして、これが終わると、秋が訪れるのである。

そうですわねえ。毎年そうでした。
さふなり。テツ道に賭けたこの命と約束を胸に、2018年、またこの時期この場所でまたお会いしましょう、の約束をするのであるな。


さあ、グランドフィナーレなり!

そうね。総裁、次回はちゃんと著者の体力作って無事帰還出来るようにしましょうね。
わたくしも身体が弱いから、気持ちが先走る気持ちもよくわかります。でも、身体を大事にしないと、気持ちもなくなってしまいますわ。
ほんとそうですよ。でも、こうしてまたみんなで「鉄研でいず」で読者の皆さんにお会い出来たのは、嬉しいな。ヒドいッ。
ツバメちゃん、ひどくないよー。でもほんと、食べ物は大事だよー。命に変わるものだからねー。
教訓を得たから、それを活かしてまた一年ですね。

秋にはまた著者さん、職場の展示もあるし、この展示の縁でいくつもお呼ばれしてますからね。

無理しないで、でもがんばらないと。

みんなを悲しませないように。

ほんと、それが本当の約束、ですものね。私もそう思います。私も約束です。
さふであるな。

そして、これが最後であるな。読者の皆様、ここまでお読みいただいて、本当にありがとうなのだ。深く感謝するのだ。

あ、そうだ! これ、あれやってなかったから、こうなったんですよ!
あ、たしかにやってなかった!
え、アレって何ですか?
いつも僕たちがやってるアレですよ。

ミエさんも一緒に!

さふであるな。忘れておった。では、最後に。
総裁と円陣を組んだみんなは、手を高くあわせて、声を揃えた。
今日も一日!
ゼロ災で行こう!
ヨシ!
その全員の声が、コーラスのように、美しく揃った。


そして、みんなの笑顔の向こうに、秋の高い空が見えていた。



この旅は終わった。


しかし、次の旅は、もう準備を始めているのだった。


彼女たちの旅は、また始まるのである。

〈鉄研でいず 2017年、新たなる旅立ち  了〉
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登場人物紹介

長原キラ ながはらキラ:エビコー鉄研の部長。みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」など口調がやたら特徴ある子。このエビコー鉄研を創部した張本人。『乙女のたしなみ・テツ道』を掲げて鉄道模型などテツ活動の充実に邁進中。

葛城御波 かつらぎ みなみ:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。しかしイマジネーション能力は随一。


武者小路詩音 むしゃのこうじ しおん:鉄研内で、模型の腕は随一。高校入学が遅れたので、実は他のみんなより年上。鉄道・運輸工学教授の娘で、超癒し系の超お嬢様。模型テツとしての腕前も一級。


芦塚ツバメ あしづかツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。


中川華子 なかがわ はなこ:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。

鹿川カオル かぬか カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のダイヤをアルバイトで組んでしまうほどの『ダイヤ鉄』。プロ将棋棋士を目指し奨励会所属。王子と呼ばれるほどハンサムな女の子。電子回路やプログラミングが得意。

田島ミエ たじまみえ:総裁の古くからの友人。凄腕の模型テツ。鉄研のみんなと一緒に大洗などを旅行したものの、関西在住で滅多に会えない。なおかつその実像は不明。

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