第13話 同性介助

文字数 2,079文字

NHKハートネットさんのツイッターで4月17日、こんな文言を目にしました。そのまま、引用させていただきます。


『女性障害者が
男性から入浴や排泄介助を受けることは
単なる羞恥心の問題ではありません
尊厳の問題です

心身共にナイフで
ズタズタにされる感覚でした
性犯罪被害に遭っているのと
感覚は変わりありません』




これに関して、私の意見を書きたいと思います。


まず、大前提として、同性介助は基本です。
介護に関わる人間なら、ほぼ100%の人が理解していることではないでしょうか?

これに関して、異論はありません。

しかし一方で、100%同性介助が可能か?という問いに関しては、残念ながら、ノーだと思っています。

理由を書かせていただきます。

まず、一点目。
リスクの問題です。

介護を必要とする女性の方全員が、小柄で細身でないことは、考えなくても分かることだと思います。

反対に、介護を行う側の人間が、全員、大柄で力のある人間でないことも、分かることだと思います。
そして、当然、筋力差で言えば、男性の方が、力はあります。

10キロのコメ袋を想像してください。
あれを、最低でも3つ以上、多ければ、5つも6つも、1度に支えなければならないのです。

それが、介護の仕事です。
特に、裸になるお風呂という場においては、転倒や転落の事故は、怪我に直結します。

小柄な女性職員が、支えられるでしょうか?



2点目です。
人員配置の問題です。

SNSの反応で、人手不足、と大雑把に書いておられる方が多かったですが……正確に言えば、人員配置の問題です。

介護業界が人手不足であることは、皆さんも耳に入っていると思いますが……
同性介助を可能にするためには、当然、職員も、必ず、男性女性両方がそろっている状況を作らなければなりません。

もっと言えば、男性女性両方がそろっているだけでなく、必ず、入浴や排泄の対応ができる状況を作らなければなりません。

つまり、男性職員はいるけれども、その職員が送迎で外に出てしまっている

とか、

女性職員はいるけれども、その職員が休憩中で、現場にいない

とか、

そういう状況すら許されないことになります。

御利用者は人間ですから、トイレに行きたいタイミングは人それぞれです。それに合わせて、職員も休憩に入らなければならないでしょうか?


そしてなにより。


小規模な事業所では、そもそも、夜勤が職員1名しかいないという場合もあります。

男性、女性両方が泊まる場合、どうすれば良いのでしょうか?

どちらかの泊まりを断るしかなくなります。
ご家族の皆様、納得してくださいますか?



3点目です。
業務が、偏ります。

特に、高齢者施設の場合ですが、
平均寿命を見てもらえれば分かる通り、御利用者は、女性の方が圧倒的に多いのです。

つまり、入浴や排泄といった業務が、女性職員に偏ることになります。

同性介助が基本だから、仕方ない、で良いでしょうか?

同じ給料をもらい、同じ勤務時間で働いていながら、男女で明らかな業務差が生まれます。

女性職員の皆さん、いかがでしょうか?



4点目。
そもそも、男性職員を希望する女性御利用者がいること。

同性介助を基本としていますが、女性の中にも、男性の方が安心感がある、と男性を希望する方がいらっしゃいます。

一人ひとり、価値観や希望が違うのです。

『同性介助をしていない=悪いこと』のように思われますが、そうではありませんよね。

そして、そんな方がいるからこそ、余計に、『じゃあ、その希望にも応えて、シフトを組めるのか?』という問題にもなってきます。




もう一度、
言いますが、

同性介助は基本です。

NHKハートネットさんで取り上げられた方の施設が、どのような状況なのかは分かりません。

本当に不可能なのか?
できたのにやらなかったのか?
それとも何か理由があったのか?

同性介助が間違っていると言いたいわけではありません。

正しいです。

ただ、それをやるためには……

という部分です。

NHKハートネットさんで、取り上げられている方や、それ以外の方が、心を痛めていることに対して、仕方ないのだから受け入れろ!という話ではありません。

何度も言いますが、それは間違ってません。

ですが、現実問題として、

それを可能とする体制が整っていないのです。


人手不足解消はもちろんのこと、そもそも、現在、介護現場がどういう状況なのか?ということも、もっとメディアや各現場職員が発信し、体制そのものを変えるよう、動いていかなければ、できることではありません。

NHKハートネットさんのリプライには、『だったら利用するな』『じゃあ女性職員しかいない施設へ行け』なんていう意見も目にしました。



どちらが間違っているとか、どちらが正しいとか、そういう問題ではなく、社会全体で考えなければならない問題ではないでしょうか?



届け介護士の声。



上記、NHKハートネットさんのツイートはこちらです。引用させていただきました。
https://twitter.com/nhk_heart/status/1647887628291678210?s=46&t=_zb7W9EjLxFRNTVdYfiJJQ
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