第34話 脱走

文字数 1,138文字

先日、2022年の認知症やその疑いによる行方不明者の数が警察庁より発表されました。
その数、なんと

18709人とのこと。

皆さんは、この数字をどう捉えますか?
多いと感じますか?
それとも少ないと感じるでしょうか?



私が介護の世界に飛び込んでから、
施設から脱走し、大騒ぎになった、所謂『離園(りえん)』事例は、3回、経験があります。

いずれも、介護職員のちょっとした気の緩みや連携ミスが原因でした。

認知症の方は、『見当識障害(けんとうしきしょうがい)』と呼ばれる、時間や場所、方角が分からなくなる症状が表れます。

そのため、この脱走ーー離園というものは、介護職員にとっては、絶対にあってはならない、最優先で阻止しなければならないものの一つなのです。

ところが、先述の通り、私自身も既に3度、離園事例に遭遇しております。
認知症対応の専門家が集まっているはずの施設においても難しい問題となっていることが分かるかと思います。


では、何故、そういったことが施設においても起こってしまうのか?


という話になりますが……
ここまで読んでくださっている方なら、ある程度想像がつくのではないでしょうか。

以前から何度も触れていることではありますが、『お年寄り』といっても、足腰がしっかりしていて、まだまだ元気な方が多くいるのです。

皆さんは、自宅のリビングから玄関へ行くまで、何秒かかりますか?

余程、大きな家でなければ、1分もかからないでしょう。

それと同じです。

ほんの一瞬、
ほんの数分、
目を離した隙に、『いつの間にかいなくなっていた』ということがあるのです。

特別養護老人ホームなどの大規模な施設では、出入り口が電子錠になっていたり、鍵に細工がしてあったりするものですが……
部屋の窓から脱出した、というケースも聞いたことがあります。

また、小規模な事業所では、単なる民家を改装している場合もあります。
そもそも玄関の鍵が、誰が見ても分かるようなものしかかけられない、という場合もあるのです。

当然、そのような場合には、何かしら対策を打っているものですが……それでも、防ぎきれないこともあります。


特に、人手不足が著しい近年では、一分一秒、全ての時間を、100%見守りができているか?というと、残念ながら、できていない場合もあります。


『可能である』という判断のもとで契約を結んで、利用していただいていますので、悪いのは職員です。
目を離した職員に責任があります。

ただ、いくら仕事中とはいえ……
一分一秒、全ての時間を、100%気を抜かず、仕事をされている方、

どのくらいいますか?

とも思います。

疲れている時はほんの数分でも、コーヒーを飲むくらいの休憩が取れるような、
その程度の職員数が揃って欲しいと思う、今日この頃です。



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