第4話 話せない介護士

文字数 992文字

介護士の仕事の一つとして、お年寄りと『コミュニケーションを取ること』があります。

介護という仕事は、まず、お年寄りと信頼関係を築くことから始まるからです。

信頼関係を築くためには、話さなければ始まりません。体調はどうか? 不安なことはあるか? なにを求めているのか? 好きなことはなにか? 嫌いなことはなにか?

そういったことを、コミュニケーションを取る中から探り、支援に繋げていくのです。

これは介護の基礎であり、職員の誰もが共通認識として持っていることです。

ところが、今の介護現場では、

『コミュニケーションを取ること』

が難しくなっています。


今の介護現場では、人手不足から『〇分以内に〜する』とか、『○時になったら〜をする』というように、時間に追われ、業務に追われています。

私が勤めている職場でも、1人あたりにかけられる時間が設定されており、『お風呂は○分くらい』、『オムツ交換は○分以内で!』と言われています。

それを超える時間がかかると、周囲の職員から、『仕事が遅い』という目で見られるのです。

つまり、『コミュニケーションを取る時間』なんてものは最初から存在しておらず、場合によっては、お年寄りと話していると、

『他にやらなきゃいけない仕事がたくさんあるのだから、のんびりコミュニケーションなんて取るな!!』

という視線を向けられるのです。

コミュニケーションを取ることも、大切な仕事であるはずの介護士が、コミュニケーションを取っていると『仕事をしていない』と思われる状況になっているのです。

実際、仕事は多くあり、現実問題として、コミュニケーションを取れる時間は限られているのですが……それでも、1日のうちの何分かは楽しく、お年寄りとコミュニケーションを取りたいと個人的には思っています。

……思ってはいますが……それでも、本当に忙しい時は厳しいですし、私も、他の職員に対して、もうちょっと早く動いて!!と思ってしまうことはあります。


皆さんは、自分のお世話をしてくれる介護士が、1日中忙しく動き回り、全然相手をしてくれない場所と、
少しの時間でも、楽しく笑顔で会話をしてくれる場所なら、どちらに居たいと思いますか?

どちらに、自分の親を預けたいと思いますか?


『人手が足りていない』というのは、そういうことなのです。


いつか、介護士本来の仕事が十全にできる環境になることを、願っています。


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