第26話 笑顔
文字数 941文字
先日、新規契約を終え、利用を開始する御利用者(B様)のご家族から、こんな話がありました。
『ばあちゃんは本当に無愛想で、何を話しても返事もしないし、にこりともしないの。すごく手のかかる人だから、迷惑をかけると思うけど、ごめんなさいね』
職員はそれを聞き、どれほど大変な人が来るのかと身構えました。
職員にとっても、無愛想でにこりともしない人よりは、いつも笑顔で朗らかな人の方が接しやすいですし、ストレスもたまりません。
いくら仕事でも、介護士とて同じ人間です。
声をかけても返事もしないような人の相手は、なるべくであればしたくありません。
利用開始当日も、職員はB様が施設へやって来た時、『ついに来たか!』と思いました。
「こんにちは。今日からよろしくお願いします」
職員がそう声をかけると、
「……はい、どうも」
B様は、そう返事をしました。
あれ?と、職員の誰もが思いました。
きちんと返事をしてくれたのです。
ある職員が、こんなことを聞きました。
「Bさんは、好きな食べ物とかありますか?」
Bさんはうーん、と宙を仰いで、
「食べれればなんでもいい」
そう答えます。
無愛想、と言えなくもない回答でしたが、きちんと考えて答えてくれています。
また、別の日、職員がカメラを向けてみました。
「Bさん、せっかくですから、記念に写真を撮っておきましょう」
「えー? 嫌よ。恥ずかしいじゃない」
「美人ですから大丈夫ですよ! 肌も白いし、笑った顔も素敵ですよ!」
「また、調子の良いこと言って……」
Bさんは、嫌だと言いながら……顔を背けながら……けれど、満更でもないといった風に、へへっと笑いました。
Bさんは、確かに人付き合いの上手い方ではないようでした。話しかけなければずっと黙っていますし、ご家族の言うように、愛想が良いか?と問われれば、決して良いとは言えませんでした。
しかし、日々、寝たきりの人や、重度の認知症を持っている人と付き合っている介護職員からすると、『すごく手のかかる人』ではないことも確かでした。
後日、Bさんが笑っている写真をご家族に見せると、『こんな顔もできたんですね』とびっくりされていました。
先入観にとらわれず、その人自身と向き合う介護職員だからこそ、撮影できた一枚だったのかもしれません。
届け介護士の声。
『ばあちゃんは本当に無愛想で、何を話しても返事もしないし、にこりともしないの。すごく手のかかる人だから、迷惑をかけると思うけど、ごめんなさいね』
職員はそれを聞き、どれほど大変な人が来るのかと身構えました。
職員にとっても、無愛想でにこりともしない人よりは、いつも笑顔で朗らかな人の方が接しやすいですし、ストレスもたまりません。
いくら仕事でも、介護士とて同じ人間です。
声をかけても返事もしないような人の相手は、なるべくであればしたくありません。
利用開始当日も、職員はB様が施設へやって来た時、『ついに来たか!』と思いました。
「こんにちは。今日からよろしくお願いします」
職員がそう声をかけると、
「……はい、どうも」
B様は、そう返事をしました。
あれ?と、職員の誰もが思いました。
きちんと返事をしてくれたのです。
ある職員が、こんなことを聞きました。
「Bさんは、好きな食べ物とかありますか?」
Bさんはうーん、と宙を仰いで、
「食べれればなんでもいい」
そう答えます。
無愛想、と言えなくもない回答でしたが、きちんと考えて答えてくれています。
また、別の日、職員がカメラを向けてみました。
「Bさん、せっかくですから、記念に写真を撮っておきましょう」
「えー? 嫌よ。恥ずかしいじゃない」
「美人ですから大丈夫ですよ! 肌も白いし、笑った顔も素敵ですよ!」
「また、調子の良いこと言って……」
Bさんは、嫌だと言いながら……顔を背けながら……けれど、満更でもないといった風に、へへっと笑いました。
Bさんは、確かに人付き合いの上手い方ではないようでした。話しかけなければずっと黙っていますし、ご家族の言うように、愛想が良いか?と問われれば、決して良いとは言えませんでした。
しかし、日々、寝たきりの人や、重度の認知症を持っている人と付き合っている介護職員からすると、『すごく手のかかる人』ではないことも確かでした。
後日、Bさんが笑っている写真をご家族に見せると、『こんな顔もできたんですね』とびっくりされていました。
先入観にとらわれず、その人自身と向き合う介護職員だからこそ、撮影できた一枚だったのかもしれません。
届け介護士の声。