第14話 体格差

文字数 1,072文字

皆さんは、『介護施設にいるお年寄り』と聞いて、どんな人たちを想像しますか?

白髪で、腰が曲がっていて、自分ではなにもできない、寝たきりのような人たち……。

そんなイメージを持っていませんか?

現実は違います。

そういった方々も、大勢いることは事実ですが、そんな方々ばかりではありません。

認知症で介護を必要とする人の中には、『認知症を持っているけど体は元気』という人がたくさんいます。

そもそも、成人男性であれば、身長170〜180センチくらいの人はよくいますよね。それ以上に体格の良い人もたくさんいます。

そんな方々が、多少腰が曲がったとして、突然、150センチとか、140センチにはならないことは説明しなくても分かると思います。

さて。
そこで皆さんに質問ですが……
介護職に就いている人は、全員、体格の良い男性でしょうか?


介護士の中には、140〜150センチくらいの小柄な女性職員も大勢います。


皆さんは、考えたことはありますか?

いくら年齢を重ね、腰が曲がっていたとしても……自分より20〜30センチ身長の高い男性から、『なんだお前は!』『生意気なことを言うな!!』などと怒鳴られ、それでも介護をしなければならない、その精神的ストレスを考えたことはありますか?

これは小柄な女性職員に限りません。

基本的に、あまりに体格差があったり、対応が難しい場合、そういったお年寄りには、男性職員が対応することもあるのですが……

そうして、対応職員が固定されると、毎日のように、特定の職員が大柄な男性を相手にしなければならなくなります。

たとえ、男性職員であっても、気持ちの良いものではありません。

日常生活の中では、余程のことがなければ、誰かから怒鳴られることはないと思います。

現代社会では特に、ハラスメントへの意識が高くなったことで、会社や学校などでも、声を荒げて、人格を否定されるような言葉をかけられることは減ってきたのではないでしょうか?


介護の世界では、違います。


認知症というものが、ある種、免罪符のようになり、職員へのキツイ言葉、時には暴力すらも『仕方ない』で済まされることがあります。

認知症の方の人権が守られるのと同様に、職員の人権、職員の精神的疲労、精神的負担についても、守られる世界になって欲しいです。

もう一度お聞きします。


皆さんは、介護を必要とするお年寄りと聞いて、どんな人たち想像されますか?


そして、介護をしている人たちは、どんな人たちですか?


介護士は、神や仏ではありません。


介護士も、人間です。


少しでも、そのことを意識していただけると幸いです。


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