第52話 利用者間トラブル

文字数 1,090文字

介護施設、介護事業所の中で、『御利用者対応』は職員にとってもっとも大切な仕事ですが、その中で、

『御利用者間トラブル』

は、対応の難しい業務の一つです。


例えば、皆さんはこんな場合、どうしますか?



御利用者Aさんは、お世話になっている介護職員のために、少しでも役に立とうと洗濯物たたみや、レクリエーションの道具作りなどを協力してくださっている。
Aさんは軽い認知症で、ある程度のことはまだまだ行える。

一方で、御利用者Bさんは、自分が上手くできないことを察して、横でにこにこ見ている。
実際、Bさんは認知症が進行しており、細かい作業や難しい手順が必要となるものはできない。

Aさんは、そんなBさんを見て、
『なんで手伝わないのか?』
『いつもお世話になっているのだから、そのくらいはしなきゃダメだ』
と、Bさんを非難する。

Bさんは、自分では上手くできないと説明するが、Aさんは
『洗濯物たたみくらいできないのか?』
『若い頃、そのくらいしてなかったのか?』
と追求する。

職員が間に入るが、Aさんは納得せず、声を荒げ、Bさんはできなくなったことを責められ、気落ちしてしまう。

そして、2人とも、時間が経つとそんなやり取りがあったことをすっかり忘れてしまい、また、同じことを繰り返す。



このような場合、皆さんはどうしますか?

御利用者間トラブルは、介護施設にはつきものです。

それぞれ、違う価値観を持つ人間同士が集まっているのですから、当たり前のことですが……介護施設では、そこへ認知症が絡んできますので、さらに複雑化します。

今回の例の場合、
お二人の席を離したり、
お手伝いをお願いする時は必ず職員が付き添い、Bさんに注意が向かないよう、配慮しながら行ったり……
いろいろ方法は考えられますが……

これを、何十人も集まる中で、微妙な調整を行いながら、共同生活を継続させなければなりません。

認知症の方は特に、少し時間が経つと忘れてしまいますので、対応を考えないと、同じトラブルが頻発します。


放っておくと、相手に手をあげる方もいらっしゃいますので、当然、放っておくことはできません。
なにより、トラブルになっている方々以外の皆さんも、不快な思いをしますので、職員は割って入らなければならないのです。



皆さんは、トラブルが起こっているところへ割って入り、上手く仲裁した経験はありますか?


介護士は、その人個人だけを見るのではなく、人間関係にも気を配り、気持ち良く生活できるよう支援することも、仕事に含まれています。

皆さんは、他者の人間関係について、悩んだり、考えたりしたことはありますか?

介護士にとっては、それが日常です。



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