第36話 施設種別②

文字数 1,515文字

前回、施設種別について書かせていただきましたが、もう少し、書かせてください。

前回、ご家族からの希望、要望等で施設種別に合わないことを現場が行うことになっている、
という趣旨の内容を書かせていただきましたが……

『それって、拒否できないの?』

という疑問を持った方もいらっしゃるのではないでしょうか?

当たり前ですが、可能です。

急を要する場合など、例外を除いて、
施設側の体制が整っていない場合などは『それはできません』とご家族の希望を断ることも可能です。

では、何故、それが行えないのか?
何故、現場が大変な思いをしているのか?

ということですが……。

これは、経営上の問題が絡んでいるからです。
介護業界は、介護をより多く必要とする『重度の御利用者』と多く契約し、サービス提供を行っている方が、儲かるのです。

以前、『介護施設には〇〇がない』というお話で、介護業界は赤字であることを書かせていただきましたが、つまり、そういうことなのです。

施設種別においては、そこまで見る必要のない、介護度の高い御利用者や、
本来であれば必要のない、ご家族からの要望など、
何故、受けているのか?という疑問の回答は、

『そっちの方が儲かるから』です。

経営者とご家族の要望が一致しているため、
そのしわ寄せが現場に来ているのです。

介護計画を立てるケアマネさんの中には、本当は御利用者それぞれに合ったプランを立てたいのに、経営者からその意見を潰され、施設の利益になるような計画を立てざるを得ない、というお話も聞いたことがあります。

御利用者のための介護施設のはずが、なんのための場所なのか?
そして、その結果として、現場で働いている介護士の負担が増大している、

ということになります。


……などと書くと、経営者が悪い、という印象になりますが、本質はそこではありません。


経営者としても、会社が経営できなければ、そもそもサービス提供が困難になるわけですし、職員への給与や賞与が滞る可能性も出てきます。
そうならないために、儲かるよう指示を出しているのです。

つまり、この問題の根っこにあるのは、介護施設が経営に困るような、そんな状況を放置している社会システムにある、ということになります。


とはいえ。

現場職員としては、
前回も書きましたが……
まず、ご家族の皆さんや、社会人である皆さんに施設種別について、理解していただきたいです。

介護現場は、それぞれの施設種別に見合った体制が組まれています。
それを超えるような要望、希望を出されると、現場はどんどん疲弊していき、空気が悪くなり、離職者が増え、最悪の場合、虐待などにつながってしまいます。

会社経営とか、介護計画がどうとか、そういった部分も絡んでいますが、まず1番はじめにあるのはご家族からの希望です。
それがなければ、経営者やケアマネも、勝手なことはできません。


※前回も書きましたが、本当に支援を必要としている場合は遠慮なく、どんどん頼ってください。分からないことや悩みなども、いつでも、話してみてください。そのために介護サービスがあります。


そして、その上で、皆さんに考えていただきたいのは、
こうしたことが起こっている社会システムについてです。

会社経営が困難→お金がないから儲かるように計画を立てる→家族の要望を全て受ける→介護現場が疲弊する→虐待事例などが起こる→1番、嫌な思いをするのは御利用者

という構造が成り立っています。

もっと介護施設にお金が回るよう、国に訴えていく必要があります。

そのためには、介護士だけがどうにかしようと動くだけでは足りません。

皆さんも、社会全体の問題として、考えていただければ幸いです。

よろしくお願いします。


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