第47話 着替えの頻度

文字数 1,541文字

皆さんは、自分の親や祖父母が介護施設に入った際、どのくらいの頻度で着替えをして欲しいと思いますか?


先日、2日続けて面会に来られたご家族から、『昨日と服装が変わっていない。なんで変えてくれないのですか?毎日変えてください』というお話がありました。

確かに、社会全体で見れば、毎日にお風呂に入り、その度に服を交換している人が多いでしょう。

人によっては、
寝巻き→普段着→仕事着→普段着→寝巻き
というように、1日の中で何度も服装を変えている人もいることでしょう。

それを考えれば、毎日服装を交換することは『当たり前』とも言えます。


では、施設ではどうか?


これは、御利用者一人一人の状態や、その施設の方針にもよるので一概に『こうしてます』とは言えないのですが……。

私の経験上、ご家族やご本人からの希望がなければ、『お風呂に入った時に交換する』というパターンが多いです。

お風呂はだいたい2〜3日に1度のペースですので、2〜3日に1度、衣類を交換しているということになります。


基本的には、お風呂の日以外に着替えは行いません。


では何故、お風呂が2〜3日に1度しか入れないのか?ということですが……

これは、単純に時間が足りないから、です。

お風呂の時間は、平均すると1人30分程度だと思いますが、そう考えると、

10人入るだけで300分。
つまり、6時間かかるわけです。

そして、当然のことながら、職員の勤務時間の兼ね合いや、御利用者がご飯を食べる時間など、さまざまは要因が絡んできますので、

1日の間に施設にいる御利用者全員にお風呂に入っていただく、なんてことは不可能なわけです。

大きな施設の場合、2〜3人同時に入浴できる設備がありますが、その分、大規模な施設であれば御利用者の人数も増えますので、どちらにしろ、1日で全員が入浴することはできません。


さて。
そうなると……
だったら、お風呂はともかく、着替えるくらい、毎日できないのか?という話になります。

皆さんは、足腰が悪かったり、腕が上手く上がらなかったり、もしくは、寝たきりになっている御利用者の『着替える』という工程が、どんなものか、考えたことはありますか?


パンツやズボンを交換するのにふらふらしてしまい、何度も立ったり座ったりしなければならなかったり、
腕が痛い中、なんとかシャツを交換したり、
シャツやズボンの前後が分からなくなっていたり、
パンツが汚れてしまっていたり、
そもそも着替える衣類を自分では準備することができなかったり……


要は、ほとんどの場合、1人着替えるのに、職員が必ず付き添わなければならないわけです。

これを、何十人ーー大規模な施設では何百人、毎日行うことができるか?

基本的には、不可能だと思ってください。

その結果として、お風呂の時に、着替えてもらおう、という結論になっているわけです。


もちろん、中にはご自分の力で問題なく着替えることができる御利用者もいらっしゃいますので、そういった方の場合はご本人にお任せするような形で着替えている場合もありますし、

小規模な事業所等で、職員が対応可能な場合は、行っているところもあると思います。


ただ、私の知る限り、ほとんどの施設、事業所では、特別に希望がない限りは毎日着替えを行うということはしておりません。

最初にも書きましたが、私たちの感覚でいけば『毎日着替える』が当たり前であることも理解しております。

できることならば、毎日着替えていただきたいと思わないこともないです。

しかし、今現在の状況下で、『なんで昨日と同じ服を着ているのですか?』などと言われると、少々、イラッとしまうのも事実です。


皆さんは、自分の親や祖父母が施設へ入ることとなった場合、どのくらいの頻度で着替えをして欲しいですか?


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