第9話 生活を支えるということ

文字数 1,100文字

医療は病気を治す仕事、
介護は生活を支える仕事、
と言われていますが、『生活を支える』とはどのようなことか、具体的に考えたことはありますか?

パッと思い浮かぶのは、食事を作る、トイレの世話をする、お風呂のお手伝いをする……といったことでしょうか。

大きく捉えれば間違いではありませんが、それだけでは足りません。

皆さんはお風呂に入る時、体から洗いますか? 髪の毛から洗いますか? 中には、体を洗う前に、まず湯船に浸かる、という人もいらっしゃるでしょう。

それを無視して、『なんでもいいからお風呂に入れれば良いんでしょ?』と、介護士の勝手な感覚で介助されたら、どう思われますか?

生活を支えるということは、その人をよく見て、よく知り、その人に合わせるということが大前提にあります。

例えば……
皆さんは、自分の親御さんのことをどのくらい知っていますか?
あなたの親御さんは、

ご飯を食べる時、ご飯とおかずを一緒に食べますか? それとも、ご飯はご飯だけで食べていますか?

味噌汁とスープなら、どちらが好きですか?

服を着る時、頭からかぶっていますか? 腕を通してから頭を入れていますか?

普段、シャツは何枚着ていますか?

夜、寝る時、仰向けで寝ていますか? それとも体を横にして寝ていますか?

布団や毛布、タオルケットは何枚かけていますか?

全て、答えられる方は少ないと思います。
介護士は、これらを知るところから業務が始まります。その人の生活習慣を知り、それを踏まえた上で、その人に合わせた介護をすることが求められます。

生活を支える、ということは、そういうことです。そんな細かいことなんて……と思われるかもしれませんが、本人にとっては、大切なことです。

皆さんが日常的に行っているこだわりや癖には、何かしら意味があることが多いです。
介護士はそれを大切にし、その人のために仕事をしています。

時折り、ご家族から、『ご飯を食べなくて困る』とか『夜寝なくて困る』とか、そう言った相談を受けることがありますが、

その人の好みやこだわり、生活習慣を把握していますか?

と思うことがあります。

米を好んで食べていた人が、家族の都合でパンや麺ばかりを出されれば、食べないこともあるでしょう。
何枚も重ね着して、たくさん布団をかけて寝ていた人が、布団一枚で寝れるでしょうか?


繰り返しになりますが……
生活を支える、というのはそういうことです。

介護という仕事は、その人自身をよく見るということです。 


皆さんは、自分の親や、愛する人のことを、どのくらい知っていますか?


ひょっとすると、介護士は、皆さん以上に、あなたの大切な人をよく見ているかもしれませんよ。


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