第30話 歳をとったとき

文字数 1,036文字

皆さんは、自分が死ぬ時、どんなふうに死にたいか?どんな風に歳を取りたいか?考えたことはありますか?

介護に携わる人間は、『人が衰えていく様子』を目にしたり、実際に亡くなる瞬間に立ち会うことがあったり……『どんな風に老いていきたいか?』を考える機会が多くあります。

おそらく、誰しも共通に思うことの一つとして、『誰かに迷惑をかけたくない』『苦しんで死にたくない』ということがあると思います。


介護士はそれをより強く、感じています。


『迷惑をかける』と一言で表現していますが、介護現場にいると、『迷惑をかける』の範囲がとてつもなく広く、大きいものだと感じるからです。

頭がしっかりしているのに、体が思うように動けない……
体は元気なのに、子供の顔も分からなくてなるほど認知症が進行してしまった……
寝たきりで、ただ息をしているだけ、というような状態……


どれも、『そうはなりたくない』状態ですよね。


ただ、そうは言っても、そうなってしまうのが人間で、自分がどうなるか?なんて誰にも分からないと思います。

そんな時、大切になるのは、『性格』や『考え方』だと思います。

介護に携わっている人ならよく分かると思うのですが……
どれほど認知症が進行しても、いつもにこにこして、穏やかに過ごしている方がいらっしゃいます。

体が動かなくなり、自分で立って歩くこともできない状態であっても、性格の部分で介護士から愛され、いつも話題の中心になるような方がいらっしゃいます。


逆に、何をしても、何をされても怒ってばかりで、いつも不機嫌そうにされている方もいますし、

そういう方は職員からも嫌われています。家族からも見放されている場合があります。

もちろん、『怒る』と言っても、その人自身ではなく、周囲に原因がある場合もありますし、一概に何が正しいとか、どちらが悪いとか、そういうことではありません。

ですが、一方で、
『その人が生きてきた中で身につけた性格・価値観』
というのは、認知症になっても、老いて動けなくなっても、意外と消えないという事実もあります。

認知症そのものが原因ではなく、その人の性格が原因で、支援の方法を変えたり、職員の対応を難しくさせていることも、介護の世界では多くあるのです。


皆さんは、自分が衰え、死に向かっていく時、どんな風になっていたいですか?


その瞬間が重要なのではなく、そこまでに積み重ねてきたものが、大切になることもあると思います。


とりあえず、私は人に優しく生きていたいと思っています。



届け介護士の声。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み